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【前編】素材/化学メーカーのDX ~コロナ時代を生き抜くAI-Readyな組織づくり~

製造業でAIの導入が進んでいます。その理由や手法とは一体どういったものなのでしょうか。さらに、化学・素材業界のデジタル変革という切り口からも、業界の現在を見ていきましょう。

2020年8月25日に開催されたセミナーでは、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)を専門とするベンチャー企業であるMI-6株式会社 代表取締役 木嵜基博氏と、AIに強い組織づくりを支援する株式会社アイデミー 代表取締役社長 石川聡彦が、それぞれ、素材/化学メーカーのDXをテーマに講演しました。

まずは【前編】として、各氏の講演内容をお届けします。

目次[非表示]

  1. 1.はじめに
  2. 2.なぜDXとAIが注目されているのか?
  3. 3.素材メーカーでのDXとは?
    1. 3.1.機械学習で新たな付加価値を創造する
    2. 3.2.AIによる新しい競争優位の構築
  4. 4.DXとAI/IoTを社会実装するための組織とは?
    1. 4.1.機械学習モデルの「PoC開発」と社会実装の大きなギャップ
    2. 4.2.AIの組織育成・一部内製化に挑戦する
  5. 5.アイデミーのソリューション
  6. 6.はじめに
  7. 7.MI(マテリアルズ・インフォマティクス)とは?
    1. 7.1.MIの概念
    2. 7.2.MIの存在意義
  8. 8.MIのメリットと事例
    1. 8.1.MI戦略上の目的
  9. 9.MI推進において陥りがちな課題
    1. 9.1.戦略との整合
    2. 9.2.MIに対する理解不足
      1. 9.2.1.・実験者
      2. 9.2.2.・MI推進/解析担当
      3. 9.2.3.・マネジメント層
    3. 9.3.MI推進のためにあるべき組織体制
  10. 10.MI-6の提供サービス
    1. 10.1.ハンズオンMI
    2. 10.2.miHub
    3. 10.3.MIロボティクス(開発中)
  11. 11.おわりに

製造業でAI導入が進むワケとは? ~コロナ時代を生き抜くAI-Readyな組織づくり~

石川 聡彦
株式会社アイデミー 代表取締役CEO

東京大学工学部卒。同大学院中退。研究・実務でデータ解析に従事した経験を活かし、Aidemyの企画・開発を主導。早稲田大学リーディング理工学博士プログラムでは、AIプログラミング実践授業の講師も担当。著書に『人工知能プログラミングのための数学がわかる本』(2018年/KADOKAWA)など。

はじめに

私どもアイデミーは「先端技術を、経済実装する。」をミッションとして、教育研修×システム開発支援で、お客様のAI/DXの内製化をサポートしているAIベンチャー企業です。

今回は3つのテーマでお話しします。DXとAIが注目されている理由、素材メーカーでのDXについて、そしてDXとAI/IoTを社会実装するための組織を考えていきます。また、最後に弊社のソリューションをご紹介できればと思います。

なぜDXとAIが注目されているのか?

2020年6月、世界最大の時価総額を持つ自動車メーカーがトヨタ自動車からテスラに変わったというニュースがありました。現在、テスラが新しい自動車メーカーの一員として注目されていることは間違いありません。

テスラは「iPhoneにタイヤを付けたデバイスメーカー」なども表現されるように、「AI/IoTなどデジタルの技術を駆使し、自動車のデジタル・トランスフォーメーションに挑戦している会社」だと説明できます。実際にテスラ車は、ハードウェアをソフトウェアで制御することによって、ビジネスモデルのフレキシビリティを実現しています。

このように、AI/DXを組み合わせて実現できるようになることは「Software is eating the world.」と表現される通り、ありとあらゆる社会・世界・ハードウェアを含めた形をソフトウェアが変えていると言えるのです。

素材メーカーでのDXとは?

DXについて、経済産業省の定義によると「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と表現されています。

AIなどをうまく使いながら、従来のITシステムによる業務プロセスの改善も含め、さらにお客様のサービス改善などを行うのがDXです。「守りのIT/攻めのIT」という言葉もありますが、守りだけでなく攻めの部分に重きを置いた言葉であると言えるでしょう。

機械学習で新たな付加価値を創造する

製造業のお客様にとっては、プロダクトとプロセス、両者におけるデジタル革新があります。

プロセスイノベーションとは、製造業の工場などの生産プロセスの改善を示しています。DXの中でも機械学習の技術を使い、画像認識やファクトリーオートメーション系のセンサーなどと連携することで、今までできなかった自動化まで実現します。

プロダクトイノベーションは、新しい付加価値をユーザーに提供することです。この中にMI(マテリアルズ・インフォマティクス)も入ってくるのかなと思っております。自動運転、MI、シェアリングエコノミー、サブスク型ビジネスモデル、ダイナミックプライシング、などといったものがデジタルの技術を使って実現できると思っています。

こちらの図は各社のプロジェクトを表すポートフォリオです。

例えばこれをボラティリティ軸で整理すると、左側の人の支援システムによる省人化/省力化に取り組まれている場合、外観検査であれば完全自動化を見据えながら、まずは見落としをなくす・省力化していきます。最終的には完全な自動化、そして新たな付加価値の創造を目指していくということだと思ってます。

さまざまな企業様を見てきた中では、このように支援システムなどを用いながら、少しずつ人の生活を便利にしていくといったプロジェクトが多いように思います。素材を含めた製造業様であっても、同様ではないでしょうか。

AIによる新しい競争優位の構築

デジタルトランスフォーメーションのキーワードの中には、新しい競争優位、競争の源泉を作るというものもありました。

機械学習の場合、データがあるほど性能が高くなり、ビジネスインパクトが見込めます。当然これは十分条件ではありませんので、必要条件の一つとして考えられがちです。

機械学習のモデルを作った時、図のp3で必要になる性能を担保するために必要なデータ量を貯めるのに、n3まで3年かかったとしたら、競合は3年間同じものを作れません。なぜならデータを貯めるために3年かかるからです。競合が同じタイミングで同じ物を作ろうとしても、3年間は競争優位の実現ができるわけです。

これは従来のITにはなかった視点なのですが、現在ほとんどの会社はAI/MLの初期フェーズにあります。つまり困難に直面しやすいという段階にあるため、各社トラブルに見舞われていることと思いますが、その分結果が出た時には大きな競争優位を作れるのではなかと考えています。

DXとAI/IoTを社会実装するための組織とは?

機械学習モデルの「PoC開発」と社会実装の大きなギャップ

PoC開発と社会実装の間にある大きなギャップを解決することが、私たちの課題です。

まずAIの導入時には教育研修、AIの拡張時には戦略立案が求められているという調査報告がありました。多くの場合は、RD/DXなど横串組織の方が教育研修を企画して他部署に展開し、機械学習で解ける課題の整理を行っています。その中で、会社のコア価値に近いものはインハウス(内製)で、会社のコア価値から遠い部分はアウトソース(外注)するという話が出てくるでしょう。オープンイノベーションによる他社との競争という観点もありますが、取り組みたい課題がどこに位置するのかはケースバイケースです。それぞれの課題によって、どのような形で挑戦するのか決められるのではないでしょうか。

AIの組織育成・一部内製化に挑戦する

いずれにせよ、必要になってくるのはAIのリテラシー、AIの技術だと思っております。特に今後AIのプロジェクトを進めていく中で、リテラシーレベルの異なる経営層・管理職・現場と、どうコミュニケーションするのか。投資対効果や、幅広い技術との格闘なども必要になるでしょう。

管理職への期待としては、技術言語と経営言語の翻訳、基本的な機械学習の技術理解、ビジネス・インパクトの大きい課題の提示が挙げられます。

若手/次世代管理職へは、機械学習への積極的挑戦、「問くべき課題」の飽くなき追求、上司への熱意を持った説明を期待しています。

これらはAND条件ではなくOR条件です。管理職か、若手/次世代管理職どちらかが変わるだけで、機械学習への取り組みは驚くほど進展すると思っています。

アイデミーのソリューション

これまでお話してきたことのためには、まず教育研修、人材育成であるということで、アイデミーは教育研修のEラーニングツール「Aidemy Business」を提供しています。

専門的な分野まで自主的に学習した層があぶりだされてくるのが、Eラーニングツールの面白い点です。リテラシーを高めることで、熱意を持った若手/管理職を見つけられるケースがあるため、ボトムアップのスキル育成だけでなく「リーダー候補の発見」ツールとしても利用可能となります。

他にも「modeloy」というツールを通じて、機械学習モデルを作った後のフェーズを支援しています。下流工程を開発不要とすることで、現場がMLモデルの構築・改善に集中できます。

このように私どもアイデミーは「Aidemy Business」や「modeloy」という製品を通じて、教育研修×システム開発支援でお客様のAI/DXの「内製化」をサポートします。


化学・素材業界のデジタル変革(マテリアルズ・インフォマティクス)とは?


木嵜 基博氏
MI-6株式会社 代表取締役

2012年京都大学卒業後、ITベンチャー企業に入社し主に事業開発として、クラウドソーシング事業の起ち上げやマイクロタスク型クラウドソーシングを活用した、ビッグデータのクレンジング業務等に従事。マザーズ上場に貢献後、2015年オリックス株式会社、2017年モバイク・ジャパン株式会社のGM代理を経て、現職。社内外のネットワークを活用した幅広い事業開発に一貫して従事。

はじめに

私どもMI-6は創業3年目、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)によって材料開発に効率化を提供し、素材の可能性を最大化することで「100年後のアタリマエを実現する」というビジョンで運営しています。

今回は、大きく3つのテーマで構成しています。まずMI(マテリアルズ・インフォマティクス)の概要、続いてMIのメリットと事例、そしてMIで陥りがちな課題とMI推進のためにあるべき組織体制についてお話しします。

MI(マテリアルズ・インフォマティクス)とは?

MIの概念

MIを弊社なりに定義すると、膨大な化合物空間やパラメータ空間の中から、計算機による(主に帰納的な)モデリングや数理最適化により所望の物性を持つ物質を探索する手法です。データセットと、いわゆるAIの技術は当然必要ですが、最終的にはそれをどう使うかという人のクリエイティブも重要視されると思っています。

既にさまざまな企業様がMIに着手しており、重点戦略として継続されているのが、ここ2~3年の状況です。利用シーンとしては、弊社が過去に取り扱ったテーマのごく一部を抜粋すると、無機材料、有機材料、複合材料、また用途としてもバッテリーや自動車関連材料など、非常に幅広くなってきています。

MIの存在意義

そもそも新材料というのはさまざまな社会課題を解決する手段であり、材料開発とはそれを解決するプロセスである、と我々は位置付けています。すると、MIとは材料開発における課題を解決するツールであり、あくまでも手段であるわけです。この「目的ではなく手段である」というところが重要でないかと考えています。 

MIのメリットと事例

事例としては、数か月で過去のベスト値を超える素材を発見したケースや、ベイズ最適化の活用で実験回数を相対的に減らせたケース、また、2つの目的物性を要求値以上にするため、非常に高次元かつ少数のデータを基に解析したケース、新規化合物をゼロから探索して特定の化合物を発見したケースなどが挙げられます。

MI戦略上の目的

MIの戦略上の目的としては2つあります。まず、R&Dの効率化、競争力のアップという部分。初期投資を下げること、成功の確度やスピードを上げることです。

そしてその先に、製品化した際にもメリットがあります。生産コストを下げ、製品のパフォーマンスとシェア向上にもつなげること。こういった部分への期待効果が増えているのです。

MI推進において陥りがちな課題

我々は、数十社に及ぶさまざまなMIをサポートさせていただいていますが「とても上手くいっています!」という会社は少なく、「技術的な課題」や「組織・戦略的な課題」を抱えているように感じています。

技術的な課題とは、データの数がない、質が低い、データ成形の個人依存などという部分ですが、突き詰めると組織・戦略上の課題が大きいのではないかと考えられます。問題となってくるのは、戦略とのずれ、MIに対する理解不足、推進体制の未整備といった部分です。

戦略との整合

例えば、R&Dのデジタル化戦略とMIがずれていると、会社のそもそもの大方針とずれていきます。R&Dの戦略として何が位置づけられているか、クライアント様の目標やあるべき状態とは何か、目標と現状のギャップをどうMIが解消していくのか、こういった部分を丁寧に整理します。こうすることで初めて社内にも説明が通りますし、戦略とも位置づけがマッチしてくるのです。

MIは手段であって目的ではありません。戦略との整合性が重要であるにも関わらず、多くの企業でこの論点が明確になっていないのです。

MIに対する理解不足

社内でMIに対する理解不足が起きている場合もあります。DX/AI全般では、組織はマネジメント層と推進/解析担当に分けられると思いますが、MIが難しいのは、ここへさらに実験者というステークホルダー、ないしはユーザーの存在が現れることです。この三者の目線や理解がバラバラであることが、大きな課題ではないでしょうか。

・実験者

実際に素材の実験をされる方は、MIのことをよく理解していないケースがあります。MIの推進役から「データをください」もしくは「この通り実験してください」と言われても、研究者としては背景を理解できないと実験したくないとか、結局何もできないのでは? と考えてしまうため、納得感がもたらされません。

・MI推進/解析担当

一方で推進/解析担当の方からすると「何で実験してくれないんだ」「データがなぜ出てこないんだ」と、認識の齟齬が生まれてきます。私が以前聞いてびっくりしたのは、社内で外注、社内ベンダーのような状態になっているというケースです。それほど噛み合わない状況が散見されます。

・マネジメント層

そしてマネジメント層の方々も、まだまだMIを“魔法の杖”だと思っている節があります。元々、素材開発は非常に“打率が低い”、「千やって三つ当たる」くらいの世界です。MIを始めれば、いきなり良いものが出ると誤解されているケースがまだ多いと思います。

MI推進は一部の専門家だけではなく、組織としての理解力を向上させる必要があるのです。最適かつ本質的な理解を進めていくことが肝要なのではないでしょうか。

MI推進のためにあるべき組織体制

あるべきMIの推進体制としては、こちらの図をご覧ください。業界全体でもこのようになっていくのが望ましいと思っています。

マネジメント層、MI推進者、取り組むテーマをハンドリングしてMIを実行する実験サイドの方々、そして並走する実験リーダーの方と、大きく3~4ブロックに分かれます。こういった部分すべてが非常に重要です。それぞれがMIの推進体制を構築し、適切な理解を持つことが一番の最短距離になると考えています。

MI-6の提供サービス

最後に簡単に弊社の提供サービスをご紹介します。現在3つのサービスを開発中で、そのうち2つを既に提供しております。

ハンズオンMI

MIのフルサポートサービス「ハンズオンMI」は、初めてMIを導入するファーストステップの方の併走や、解析のご支援・コンサルティングを行います。また、社内のリソースで扱いきれないような高度な解析や、専門性を要するテーマのお手伝いをしています。

miHub

MIは内製化も含めて社内で推進体制を樹立していくべきだと考えているため、推進者はもちろん、材料の実験者・研究者の方が自身でMIをできるようにしていきたいという思いがあります。そこで、2020年4月から我々のノウハウを詰め込んだMIのソフトウェア、そしてサポートサービス「miHub」を提供しています。

大きなポイントとしては、AIの知識がなくても使用可能であること、初期投資も不要で安価な点、導入支援や運用サポートもセットで提供している部分です。しっかり自走できる体制を一緒に作っていければと思っています。

MIロボティクス(開発中)

MIとロボによる完全自動化サービスを開発中です。自動合成・評価をサービスとして提供します。MIにより実験条件の指示を行い、すべてのプロセスを自動化するものです。

おわりに

講演に引き続き、石川・木嵜両氏による質疑応答が行われました。その模様は【後編】でお伝えします。ご期待ください!

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