シスメックス株式会社様(以下、シスメックス様)は、1968年の創立以来、血液や尿などを採取して調べる検体検査分野を中心として事業を展開し、現在は190以上の国や地域で、人々の健康を支えています。長期ビジョン「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」のもと、一人ひとりの生涯にわたるヘルスケアの旅路「ヘルスケアジャーニー」がより良いものになるよう、検体検査領域でのさらなるイノベーション創出に加え、新たな領域にも挑戦しています。
全社横断のDX推進に取り組んでおられるDX戦略推進本部 情報ソリューション部
プリンシパルプランナーの木幡 紀男 様にDX人材育成についてお話をお伺いしました。
※写真は全社デジタル人材育成チームの皆様。左から木幡 紀男 様、西田 泰輔 様、北原 亮宏 様 (2024年5月現在)
企業名 | シスメックス株式会社 |
事業内容 | 臨床検査機器、検査用試薬ならびに関連ソフトウェアなどの開発・製造・販売・輸出入 |
従業員数 | 連結:11,457名 単体:3,400名(2025年3月31日現在) |
利用サービス | Aidemy Business(オンラインDXラーニング) |
導入目的 | デジタル人材の育成基盤構築 |
Webサイト | https://www.sysmex.co.jp/ |
目次
DX人材育成実施の背景
社内でDXを推進するためには、プロセスやシステムの整備だけでなく、「人」へのアプローチとしてデジタルリテラシーを高める取り組みが必要だと考えました。
部門ごとにデジタル技術の教育方針が異なり、スキルレベルにもバラつきがある中で、社内におけるデジタルスキルや人材定義が明確でない課題がありました。
また、デジタル技術に興味を持っていても、取り掛かりやすい機会やツールが無かったため、リテラシーやスキルの向上に至らない層が一定数存在していました。
このような課題を背景に、社内の誰もがデジタルスキルを体系的に学べる機会を提供し、全社的な底上げを図る必要性を強く感じていました。
さらに、新しい技術やツールが次々と登場する中で、自社で教材を継続的に開発・更新することは困難であり、外部の学習プラットフォームを活用することが現実的な解決策と判断しました。
Aidemy Business導入の決め手
デジタル人材の育成方針を策定するにあたり、当社では経済産業省および情報処理推進機構(IPA)が策定した「デジタルスキル標準(DSS)」の考え方を採用しました。これに基づき、社員をどのような人材類型として育てるべきか、またその類型ごとに必要なスキルセットをどのように定義し、評価するかといった全体設計を行いました。
そのため、導入する学習プラットフォームにおいても、この「デジタルスキル標準」に準拠したコンテンツが用意されていることを重視。内容の整合性がとれていることで、社員の育成と評価が一貫した方針で運用できると考えました。また、社員が担う業務や役割は多岐にわたるため、習得すべきデジタル技術の範囲も広く、多層的です。幅広い領域にわたって体系的に学べることが必須条件でした。
Aidemy Businessは、こうしたDSSに基づくスキルを包括的にカバーできるカリキュラムと、職種横断的に活用できる柔軟性を備えており、当社のニーズと合致していました。
また、AidemyBusinessの操作性や、動画と演習を組み合わせたコンテンツの質、導入後のカリキュラム構築支援を含むサポート体制を評価し、導入を決定しました。
研修対象者の選定およびAidemy Business(eラーニング)の活用方法について
社内で定義したデジタル人材類型(例:ビジネスアーキテクト、データサイエンティストなど)毎にレベルを設け、Aidemy Businessの提供コースと連動したカリキュラムを構築しています。これにより、社員は自身の役割やスキルレベルに応じて必要な学習内容を明確に把握し、段階的にスキルアップできる仕組みとなっています。
デジタル人材類型に準じた学習者の募集については、定期的に全社掲示板で告知し、手上げ制によって受講希望者を募る形式を採用。受動的な指名制ではなく、自発的に学びたい社員が積極的に名乗りを上げられる環境を整えています。


また、ライセンスフリー*のコースは全社員(約3,000名)にアカウントを配布しており、カリキュラムに関係なく、誰もが興味のあるテーマから自由に学習できるようにしています。これにより、学習の裾野を広げ、未経験層や興味関心層へのリーチも可能になっています。
さらに、社内のDX推進部門を中心に、「全社デジタル人材育成チーム」を構成し、受講者に対するサポート体制を整備。受講者からの問い合わせ対応や、カリキュラムの変更、再テストのためのリセットなど、学習中の不安や障壁を取り除くためのフォローアップを継続的に行っています。こうした伴走体制が、学習継続率や定着度の向上に寄与しています。
*Aidemy Businessではライセンス費用が無料で受講できるコースを全48コース(2025年6月現在)提供しております。
カリキュラムの一例(2025年6月現在)

Aidemy Businessの導入によって感じた成果・変化
2024年度末には、社員の約20%(600名)が何らかのデジタル人材類型のレベルを取得。社員のリテラシーレベル向上を定量的に把握できるようになったことが大きな成果です。また、デジタルスキルをビジネススキルの一部として捉える風土が醸成され、2025年度には人事部門とDX推進部門が連携して全社的なデジタルスキル向上に取り組む体制が進んでいます。
受講者の声
Aidemy Businessの受講者からは、下記のような声が寄せられています。
- 「第3期、第4期を受講し、データサイエンティストのカリキュラムを修了しました。データ整理やデータの可視化に役立っており、引き続きAIエンジニアも学びたい」
- 「部内メンバーに対して、変化のきっかけを促したいので、まずは自身のスキルを向上したい」
- 「業務でExcelを使ったデータ分析やシミュレーションを行っているが、効率や汎用性に課題がある。Aidemy Businessでの学びを通じて、製品開発プロジェクトでのデータ活用や装置の性能向上に役立てたい」
- 「Python関連に関して受講し、非常に役に立ち、今後データサイエンティストとしての知識を臨床および医療経済評価等に生かしたい。」
今後のDX人材育成における展望
部門によって学習の浸透度には差があり、さらなる啓蒙活動と、習得したスキルを実務で活かす仕組みづくりが継続課題です。
デジタルスキル標準をベースにした人材類型は、必要に応じて見直しながら、株式会社アイデミーには、新たなAidemy Businessの新規コースのリリース時に既存カリキュラムとの整合性を一緒に検討できるような継続的な伴走支援を期待しています。