GX人材の不足
企業が持続的に生き残るための成長戦略としても注目が高まっているGX達成において、大きな制約となっているのが人材です。2022年7月に内閣府より公表された「令和4年度年次経済財政報告」によれば、最も影響が大きい課題として「必要なノウハウ、人員が不足している」と回答した企業は38.2%となりました。これは、「投資・運営コスト」「必要な技術」を抜き、課題の第1位になっています。
その一方で、同じ調査では人材育成の取組を「実施した/実施している」とした企業の割合は約30%程度にとどまっているのが現状です。
出典:内閣府「令和4年度年次経済財政報告」
GX人材とは?
では、GX人材とはどのようなスキルを持った人材で、企業においてどのような活躍が期待されているのでしょうか?いくつかの職種を例にご紹介します。
企画・開発
サプライチェーン含むGHG排出量の把握と抑制が競争力を持つようになります。既存事業の脱炭素転換や、排出量を抑えた製品・素材・製造プロセスの企画・開発が求められます。
調達・生産
同じく、サプライチェーン含むGHG排出量の把握と抑制が競争力を持つようになります。原材料や部品の調達時に配慮が必要になる他、製造プロセスの見直しが必要です。
営業・広告
市場ルールや取引先・消費者の評価軸が徐々に環境配慮型に移行することが見込まれます。変化を先読みし、提案や広報戦略への反映が求められます。
財務・IR・広報
CNを始めとするESGの取組が企業価値の評価に反映されるようなり、資金調達にも影響するようになります。
ガイドラインやルールを把握し、自社ビジネスの持続可能性・強みをアピールする情報開示が必要になるほか、GHG排出量把握時に必要になる活動量データと経理データを連動させるなど、排出量算定の上でも重要な役割が期待されています。
人事
社内のこれまでの知見だけではGX達成は困難なため、GX人材の採用・育成が必要です。
経営企画・サステナビリティ
長期的な視点で社会や環境に与える影響を考慮した持続可能な成長戦略の立案と実行のため、技術/市場/制度などの最新情報を常にアップデートしながら、リスクと機会を把握し、社内を巻き込みGXを実現する横断的な役割が求められます。
GXスキル標準とは?
ご紹介したようにGX人材に期待される役割は多岐にわたり、対応には複合的なスキルが必要です。自社にとって必要なGX人材を定義し、戦略的に人材の育成、採用、配置を進めることが重要です。
GX人材に必要なスキルの標準化については、GXリーグ内に設立されたGX人材市場創造WGより「GXスキル標準」が2024年5月に公開されています。「GXスキル標準」は「GXリテラシー標準(GXSS-L)Ver1.0」と「GX推進スキル標準(GXSS-P)Ver1.0」から成り立っています。
「GXリテラシー標準(GXSS-L)」
GXに携わる全ての人が身につけるべきリテラシーとして学習項目と到達度が示されてます。GXに学習項目が体系的に整理されていますので、企業がGX人材育成計画を作成する際や個人が学習計画を立てる際に有益です。
出典:「GXスキル標準等」を基にアイデミーが作成
「GX推進スキル標準(GXSS-P)」
「GX推進スキル標準(GXSS-P)」は、4段階のGXSSレベル標準、4つの人材類型と下位区分のロール・スキル項目で構成されています。「GXリテラシー標準(GXSS-L)」はGXSSレベル01に相当し、プロフェッショナルレベルに絞ったレベル02以上を「GX推進スキル標準」として標準化しています。
出典:「GXスキル標準等」を基にアイデミーが作成
2024年5月時点はGXアナリスト(ロール:算定)とスGXストラテジスト(ロール:削減計画)の定義が公開されています。GX人材市場創造WGは2024年度も活動を継続し、Ver1.0のスキル標準を基に検討拡充、スキル標準の活用によるGX推進上の課題解決とその進め方を示した公表物の作成を進めることが発表されています。企業のGX人材育成戦略作成にあたっては、GX人材市場創造WGの活動にも注目してみましょう。
最後に
オンライン学習サービス(Aidemy GX)では、GXスキル標準で示された学習テーマに該当するコースを幅広く提供しております。職種に求められるスキルを踏まえたGX人材育成プログラムづくりなど、実務に直結するスキル獲得につながる人材育成に伴走しています。ぜひお気軽にお問い合わせください!
出典
内閣府:「令和4年度年次経済財政報告」
GXリーグ:「GX人材市場創造WG」がGXスキル標準を公表いたしました