「DXを推進したい」と思っても、実際には「どんな人材が必要なのか」「どの知識を備えていれば十分なのか」が分かりにくいものです。
そこで役に立つのがDX資格です。
資格を活用すれば、社員のスキルを客観的に把握できるだけでなく、取引先や社外に対して「この会社にはDXを任せられる人材がいる」と信頼性を示すこともできます。
さらに、資格取得を研修やキャリアパスに組み込むことで、社員一人ひとりが学ぶ意欲を持ちやすくなるメリットもあります。
本記事では、数あるDX関連資格の中から、特に注目すべき国家資格と民間資格を紹介します。
それぞれの特徴や試験の概要に加えて、「どんな場面で活かせるのか」まで具体的に解説しますので、社員教育や人材育成を検討中の方はぜひ参考にしてください。
目次
DXにおすすめの5つの国家資格
DXを進めるにあたって「どの資格を社員に取らせるべきか」と悩む企業は少なくありません。
その中でも、国(IPA:情報処理推進機構など)が実施している国家資格は信頼性が高く、社内外にアピールできる強みがあります。
国家資格は、基礎知識を確認できる入門レベルから、経営戦略やシステム設計に踏み込む高度なものまで幅広く用意されています。
そのため、社員のスキルレベルや役割に合わせて段階的に取得させることが可能です。
ここでは、特にDX推進に役立つ以下の国家資格を5つ紹介します。
- ITパスポート
- 基本情報技術者試験
- プロジェクトマネージャ試験
- データベーススペシャリスト試験
- ITストラテジスト試験
それぞれ、解説します。
ITパスポート
ITパスポートは、IPA(情報処理推進機構)が主催する国家試験です。
IT分野の入門資格であり、社会人や学生を問わず、DX時代に必要な基礎知識を幅広く学べます。

項目 | 内容 |
開催時期 | 随時開催(全国の試験会場で実施) |
試験内容 | CBT方式・四肢択一(120分100問) |
受験料 | 7,500円(税込) |
公式HP | ITパスポート公式サイト |
ITを専門にしていない社員でも、AIやビッグデータ、経営戦略やマーケティングまでの基礎知識を身につけられます。全社員のDXリテラシーをそろえる目的で受験させる企業も多いので、DX人材育成におすすめです。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、同じくIPAが実施する国家資格です。
エンジニアを目指す人にとっての登竜門であり、プログラミングやアルゴリズム、システム設計など幅広い知識を問われます。

項目 | 内容 |
開催時期 | CBT方式で随時開催 |
試験内容 | 科目A:多肢選択式(90分60問) 科目B:多肢選択式(100分20問) |
受験料 | 7,500円(税込) |
公式HP | 基本情報技術者試験公式サイト |
社内にITの基礎が分かる人材を増やせます。たとえば、工場DXや小売DXの現場で、エンジニアと現場担当が同じ知識レベルで会話できるようになることは大きなメリットです。
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、大規模なプロジェクトを管理できる力を評価する国家試験です。

項目 | 内容 |
開催時期 | 年1回(10月) |
試験内容 | 午前Ⅰ・Ⅱ(四択式) 午後Ⅰ(記述式) 午後Ⅱ(論述式) |
受験料 | 7,500円(税込) |
公式HP | プロジェクトマネージャ試験 公式サイト |
大規模プロジェクトで「遅れる」「コストが膨らむ」といったリスクを抑えられます。工場DXや建設DXなど、期間の長い案件を進めるうえで頼れる資格です。
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験は、IPAが実施する高度情報処理技術者試験の一つです。
データベース設計・運用の専門家としての知識を証明できます。

項目 | 内容 |
開催時期 | 年1回(10月) |
試験内容 | 午前Ⅰ:四択(30問50分)、午前Ⅱ:四択(25問40分)午後Ⅰ:記述(2問90分)、午後Ⅱ:記述(1問120分) |
受験料 | 7,500円(税込) |
公式HP | データベーススペシャリスト試験公式サイト |
企業のデータ活用を進めるうえで欠かせない、基盤システムやデータ分析の土台づくりに強いです。
ビッグデータを活用した製造業DXや農業DXのような分野で特に力を発揮します。
ITストラテジスト試験
ITストラテジスト試験は、経営とITを結びつける力を評価する国家試験です。
難易度は高めですが、合格すれば経営層に近い立場での信頼を得られます。

項目 | 内容 |
開催時期 | 年1回(4月) |
試験内容 | 午前Ⅰ・Ⅱ(四択式) 午後Ⅰ(記述式) 午後Ⅱ(論述式) |
受験料 | 7,500円(税込) |
公式HP | ITストラテジスト試験 公式サイト |
「この投資は本当に必要か?」を数字と戦略の両方で検証できます。経営会議でDX投資を議論する際に有効な判断材料となるでしょう。
DXにおすすめの7つの民間資格・検定
国家資格で基礎や体系的な知識を固めるのも大切ですが、DXの現場で即戦力となるスキルを学ぶには、民間団体が提供する資格や検定も欠かせません。
民間資格は最新の技術トレンドや業界ニーズを反映しやすく、開催頻度も多いため、社員が挑戦しやすいのが特徴です。
特に、クラウドやAI、データ分析などはDX推進の中心となる分野です。これらをカバーできる資格を持つことで、現場での活用力が大きく高まります。
ここでは、実務で役立つ以下の7つの資格・検定 を紹介します。
- DX検定
- +DX認定資格
- デジタルトランスフォーメーション検定
- ITコーディネータ試験
- AWS認定試験
- Pythonエンジニア認定試験
- AI実装検定
それぞれ、解説します。
DX検定
DX検定は、ITの最新技術やビジネストレンドを幅広く学べる知識試験です。
自宅からオンラインで受験できるのも手軽なポイントです。

項目 | 内容 |
開催時期 | 年2回(1月・7月頃) |
試験内容 | 多肢選択式(60分・120問)・Web受験対応 |
受験料 | 6,600円(税込) |
公式HP | DX検定 公式サイト |
部署ごとのDX知識を「スコア」で見える化できます。
人事部の方なら研修の計画を立てるときに役立ちますし、新入社員や異動者のスキルチェックにも使えます。DX研修のeラーニングと組み合わせれば、教育効果をさらに高められます。
+DX認定資格
+DX認定資格は、DXを進めるために必要な「思考力」や「計画力」を評価する試験です。
オンラインで受験でき、結果もすぐに確認できます。

出典:IoT検定制度委員会
項目 | 内容 |
開催時期 | 通年(随時受験可能) |
試験内容 | CBT方式・四肢択一(40分・40問、80%正答で合格) |
受験料 | 8,800円(税込) |
公式HP | +DX認定資格 公式サイト |
「DX推進担当」として社内外から信頼されたい方におすすめです。
革新性や顧客視点など、実務で欠かせない観点を身につけられます。DX人材育成プログラムと合わせれば、組織全体のスキル底上げにもつながります。
デジタルトランスフォーメーション検定
デジタルトランスフォーメーション検定は、「基礎編」から「責任者向け」まで段階的に学べるのが特徴です。

項目 | 内容 |
開催時期 | 年4回(詳細は公式サイトにて確認) |
試験内容 | CBT方式DXパスポート(60分60問) DX推進アドバイザー(105分100問) DXオフィサー(120分100問) |
受験料 | DXパスポート 9,350円(税込) DX推進アドバイザー 11,000円(税込) DXオフィサー 13,200円(税込) |
公式HP | DXパスポート DX推進アドバイザー DXオフィサー |
若手から管理職、そして責任者まで、段階的にステップアップできます。会社全体のDXリテラシーを揃えるのにぴったりです。DX人材育成を考えている企業には特におすすめです。
ITコーディネータ試験
ITコーディネータ試験は、経済産業省が推進する資格です。経営課題を整理して、IT導入で解決するスキルを証明できます。

出典:ITコーディネータ協会
項目 | 内容 |
開催時期 | 随時開催 |
試験内容 | CBT方式・多岐選択問題一般コース(120分100問) 専門スキルコース(80分60問) |
受験料 | 一般コース19,800円(税込) 専門スキルコース9,900円(税込) |
公式HP | ITコーディネータ試験公式サイト |
現場の声を聞きながら改善策をまとめ、システム導入まで落とし込めます。製造業DXや小売DXなど、業務改革が必要な分野で特に効果を発揮します。
AWS認定試験
AWS認定試験は、Amazonが提供するクラウドサービス「AWS」を使いこなせることを証明する国際資格です。

項目 | 内容 |
開催時期 | 通年 |
試験内容 | Foundational/Associate/Professional/Specialtyなど複数区分 |
受験料 | 100~300 USD |
公式HP | AWS認定公式サイト |
クラウド基盤を構築し、データ分析やAI導入を社内で進めやすくなります。DX内製化を考えている企業には特におすすめです。
Pythonエンジニア認定試験
Pythonエンジニア認定試験は、プログラミング言語「Python」に関する知識を評価する資格です。PythonはAIやデータ分析に強い言語として人気があります。

出典:Odyssey CBT
項目 | 内容 |
開催時期 | 通年 |
試験内容 | 基礎・データ分析(選択式 60分40問) 実践(選択式 75分40問) |
受験料 | 基礎・データ分析 11,000円(税込) 実践 13,200円(税込) |
公式HP | Pythonエンジニア認定試験公式サイト |
日常業務の自動化やデータ分析を社内で進められます。
農業DXのようにデータ活用がカギとなる分野で大きな力を発揮します。
AI実装検定
AI実装検定は、ディープラーニングを実務に応用する力を段階的に評価する試験です。

出典:AI実装検定
項目 | 内容 |
開催時期 | 通年 |
試験内容 | B級:四択式(40分30問) A級:四択式(60分60問) S級:四択式(60分50問) |
受験料 | B級 9,900円(税込) A級 14,850円(税込) S級 33,000円(税込) |
公式HP | AI実装検定公式サイト |
AIのPoC(試作)で止まらず、実際の業務に組み込むところまで到達できます。DX人材育成の一環として取り入れるのも効果的です。
DX資格の国家資格と民間資格の違い
DXに関連する資格には、大きく分けて「国家資格」と「民間資格」があります。
どちらもDXを進めるうえで役立ちますが、特徴やメリットが違うので整理しておきましょう。
DX資格の国家資格とは?
国家資格は、国が認定している公的な試験で、特にIPA(情報処理推進機構)が主催しているものが中心です。
代表的な資格は以下のとおりです。
- ITパスポート
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- ITストラテジスト試験
- データベーススペシャリスト試験
- プロジェクトマネージャ試験
国家資格は社会的な信頼度が高く、昇進や評価基準としても有効です。
DX資格の民間資格とは?
民間資格は、業界団体や企業が主催している試験で、最新のDXトレンドに対応しやすいのが特徴です。
代表的な資格は以下のとおりです。
- DX検定
- +DX認定資格
- G検定
- AI実装検定 など
オンライン受験できるものも多く、スキルアップのスピードを重視したい人に向いています。
国家資格と民間資格のメリット・デメリット
- 国家資格のメリット:社会的信用度が高く、基礎から体系的に学べる
- 国家資格のデメリット:試験が年1~2回しかなく、難易度も高め
- 民間資格のメリット:最新技術を学べ、開催頻度が多く受けやすい
- 民間資格のデメリット:社会的認知度は国家資格ほど高くない
DX資格は国家資格と民間資格を組み合わせるのがおすすめ
国家資格で基礎力を固め、民間資格で最新技術を補うのが一番効果的です。
たとえば「ITパスポート+DX検定」や「基本情報技術者+G検定」のように組み合わせることで、バランスの良いDX人材を育成できます。
資格と並行して、補助金・助成金を活用した研修制度を取り入れる企業も少なくありません。
DX初心者におすすめの資格は?
DXに関心はあるけれど「どこから学んだらいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
そんなときに役立つのが、初心者でも取り組みやすいDX関連資格です。基礎からスタートできるので、未経験の社員研修や新入社員教育にも向いています。
初心者におすすめのDX国家資格:ITパスポート
ITパスポートは、IPA(情報処理推進機構)が実施する国家資格です。
ITの基礎だけでなく、AI・IoT・セキュリティ・経営戦略まで広く学べるのが特徴です。
「まずは全社員が最低限持っておきたい資格」として、多くの企業が研修に取り入れています。
DXの基礎を学べる民間資格:DX検定(スタンダードレベル)
DX検定は、ITとビジネスの最新トレンドを体系的に学べる資格です。
スタンダードレベルなら基礎的な知識を幅広くカバーしており、初心者が「DXの全体像」をつかむのに最適です。
特に、ITに詳しくない営業部門やバックオフィスの社員にも受験させやすいのがポイントです。
DX人材の思考法を学べる:+DX認定資格
+DX認定資格は、DX推進に必要な「顧客視点」「継続性」「生産性」などを学べる試験です。
内容は専門知識というよりも「DX人材に必要な考え方」を体系的に学ぶものです。そのため、管理職やこれからプロジェクトを任される人材におすすめです。
初心者におすすめのDX資格を選ぶポイント
DXを学び始めるときに重要なのは「どの資格を選ぶか」です。
特に初心者の方は、いきなり難しい資格に挑戦するよりも、取り組みやすく全体像をつかめる資格を選ぶのがポイントです。
具体的には、次の3つを意識すると選びやすくなります。
- 取り組みやすさ:オンライン受験やCBT方式に対応している資格なら、無理なく挑戦できます。
- 知識の幅広さ:ITだけでなく、経営やセキュリティまで幅広く学べる資格は、DXの全体像を理解する助けになります。
- 社内展開のしやすさ:国家資格は全社員教育に使いやすく、民間資格は部門研修や実務寄りの学びに適しています。
つまり「簡単に受験できる」「DXを広く学べる」「組織に展開しやすい」の3点を満たす資格を選ぶと、DX初心者でもスムーズにスキルを身につけられます。
DX初心者が資格を取るメリット
DX初心者でも資格を取得すると、個人と組織の両方に多くのメリットがあります。
まず、社員にとっては「DXは難しそう」という心理的なハードルを下げ、学びやすい環境をつくれること。さらに資格学習を通じて得た知識が、日々の業務や会議で役立つようになります。
組織にとっても効果は大きく、社内で共通の用語や考え方が浸透することで、営業・IT・管理部門の連携がスムーズになります。
加えて、初心者向け資格を足がかりにすれば、応用情報技術者試験やG検定といった上位資格にも挑戦しやすくなり、将来的なDX人材の育成にもつながります。
このように、初心者が資格を取ることは「社員の成長」と「会社のDX推進」の両方に直結する、大きな投資効果があると言えるでしょう。
DX資格の難易度ランキング
DX関連の資格は種類が多く、難易度もさまざまです。
資格を選ぶときに「どのレベルから始めるべきか」を理解しておくと、自分や社員に合った学び方が見えてきます。
今回は、DX資格の難易度ランキングとして、初級・中級・上級に分けてみました。試験範囲の広さや問題形式の難易度、必要とされる実務経験、資格取得後の活用シーンといった要素をもとに、初級・中級・上級に分けています。
初級(取り組みやすいレベル)
まずは基礎知識を身につけたい方に向いています。学習範囲も広すぎず、DXの入口として挑戦しやすい資格です。
- ITパスポート:社会人全般のIT基礎知識をカバー
- DX検定(スタンダード):DXの最新動向を幅広く学べる
初心者の学びやすさを重視するなら、このレベルから始めるのがおすすめです。
中級(実務に直結するレベル)
業務でDXを推進する立場の方や、一定のITスキルがある方に向いています。基礎だけでなく、応用的な知識や実務力が問われます。
- 応用情報技術者試験:システム企画やマネジメントまで幅広くカバー
- G検定:AIやディープラーニングの基礎を体系的に学べる
- +DX認定資格:DX推進に必要な視点や思考法を証明できる
現場でDXプロジェクトをリードする人材には、このレベルの資格が役立ちます。
上級(高度専門人材向け)
経営層や部長職、あるいは専門エンジニアとしてDXを主導する立場の人に適しています。難易度は高いですが、その分だけ信頼性と評価も大きいのが特徴です。
- ITストラテジスト試験:経営戦略とITを結びつける高度資格
- プロジェクトマネージャ試験:大規模なプロジェクト管理能力を証明
- データベーススペシャリスト試験:データ基盤を支える専門スキルを評価
これらの資格を持つことで、組織内でのDX推進リーダーとしての立場を確立しやすくなります。
難易度別に資格を選ぶコツ
- 初級資格 → DXの基礎を全社員に浸透させる目的で活用
- 中級資格 → プロジェクトを担当する人材に割り当てる
- 上級資格 → 部門長や経営層の右腕として、戦略を実行する人材育成に使う
このように難易度ごとに役割を分けると、資格取得が個人のスキルアップだけでなく、会社全体のDX推進に直結します。
DX資格と研修を組み合わせて、DX人材を育成しよう
ここまで、DX推進に役立つ資格を紹介してきました。
資格は社員のスキルを客観的に示せる指標になりますが、それだけでDX人材が育つわけではありません。大切なのは、資格取得をゴールにせず、日常業務に活かせる学習環境を用意することです。
そこでおすすめなのが Aidemy Business です。
Aidemy Businessは、生成AIやPythonをはじめとする最新テクノロジーを体系的に学べるオンライン学習プラットフォーム。経済産業省のデジタルスキル標準に準拠しており、社員のレベルに応じて 要件定義 → 育成計画 → 学習 → 効果測定 を一気通貫でサポートします。
- DX資格で学んだ知識を実務につなげられる
- 250種類以上のAI/DX学習コースで社員のスキルを底上げできる
- スキルアセスメントで成果を見える化できる
このように、資格と研修を組み合わせることで、企業はより確実にDX人材を育成できます。
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