損保業界にも変革の波が押し寄せている。特に顕著なのが自動車保険の分野だ。通信システムを利用してサービスを提供するテレマティクス時代に相応しい保険の姿が求められている。自動車保険に強みを持つ、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(以下、あいおいニッセイ同和損保)は、データ活用を強化するべく、急ピッチでデータサイエンティストの育成に取り組んでいる。
目次
プロフィール
事業内容
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損害保険事業
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従業員数
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41,582 名(グループ連結 2020 年 3 月 31 日現在)
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導入目的
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データサイエンティストの育成、データのビジネス活用
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Webサイト
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テレマティクス時代に向け、データで新たなビジネスを
あいおいニッセイ同和損保は、損保業界大手の一角で、特に自動車保険に大きな強みを持つ。2018年4月から国内初の運転挙動反映型テレマティクス自動車保険の販売を開始するなど、CASE(Connected、Autonomous、Shared&Services、Electric)・MaaS(Mobility as a Service)といったモビリティ社会に向けた保険商品の開発に注力している。
「従来より保険業界はテクノロジーを使ってビジネスを作ってきました。現在、当社ではテレマティクスモビリティ・サービス(安全・安心で快適なモビリティ社会に向けた取り組み)、 デジタルトランスフォーメーション(保険業務の改革)、そしてプラットフォーマーとのアライアンス(サービスに溶け込んだ保険の拡販)を組織横断のプロジェクトとして展開して、ビジネスモデルの変革に取り組んでいます。そのベースになるのがデータ活用です」と同社の経営企画部データソリューション室室長の大沼顕介氏は語る。
同社がデータ活用に注力するようになったのは、2004年のテレマティクス自動車保険が登場してきた頃からだ。ビジネスの拡大とともにその重要性は高まり、2017年にデータ活用に 強い人財が求められ、大沼氏が着任した。その活動を全社のあらゆる業務に展開すべく2018年6月に新設されたのが、 データソリューション室である。「当初、少人数で立ち上げたデータソリューション室ですが、中途採用や配置転換、新卒採用で人財を集めてきました」と大沼氏。現在は新卒社員4名を含めて、国内12名、海外5名まで規模を拡張している。
データソリューション室の目下の課題は、データ活用人財の育成だ。「業界問わずデータサイエンティストが求められており、 経験のあるデータサイエンティストを中途採用するのは困難です。アクチュアリー(保険数理業務の専門職)人財の業務領域 拡大や新卒採用に頼らざるを得ない。しかし、体系的に教育してデータサイエンティストとして育成しなければその能力を活かせません」と大沼氏は教育の重要性を語る。
新卒を効率的に育成してデータサイエンティストに
現在、同室では3つの領域でデータ活用人財の教育に臨んでいる。全社レベルでのデータ活用リテラシーの底上げ、新たなデータサイエンティストの育成、そしてデータサイエンティストのさらなるスキルアップである。育成方法を検討するチーム を設けて、それぞれの領域で活動を行っている。
その一つが、新卒向けの研修プログラムである。昨年から新卒採用コースに「データサイエンス」が追加され、2020年4月から第一期生として新卒 4 名が配属された。「8名の部署に4名の新卒が配属されるので、効率的に体系立てて教育を実施 しなければ業務に支障も出てきます」と新人育成を担当する同 室の田村光平氏は振り返る。検討を重ね相談したのは、テクノスデータサイエンス・エンジニアリング(TDSE) だった。2017年9月に、ビッグデータ解析・AI 事業について資本業務提携を行い、ビッグデータ分析、AI を活用した商品・サー ビスの開発などに一緒に取り組んできた。TDSE は法人向けのAI人財教育でも豊富な実績を持っていた。
また、並行して注目したのがアイデミー。同社が提供する「Aidemy Business」は受講に利用するPCに環境構築をすることなく、機械学習で使われる「Python」などが学習できる。法人利用では、メンバーの学習進捗がわかる管理 画面が提供され、管理者が各人の進み具合を把握できるのが 特徴的だ。「TDSE とアイデミーのそれぞれと打ち合わせを進めていたところに、両者が提携するという話が飛び込んできました。それなら両社が組んで研修プログラムを作成できないかと申し入れたのです」と田村氏。集合研修を行っているTDSE と、オンライン学習を提供するアイデミーを組み合わせることで「効率的な研修プログラムが構成できるのではないか」と考えたという。
オンラインと集合研修で効果的なプログラムを構成
あいおいニッセイ同和損保とTDSE、アイデミーの三者による話し合いは 2020年の年初から始まった。「データサイエンティストには、ビジネスを理解するビジネス力、プログラミングなどのデータエンジニア力、機械学習を駆使できるデータサイエンス力が求められます。これらをどう効率的に身に 付けてもらえるかが鍵だと考えました」と大沼氏は語る。
話し合いの結果、あいおいニッセイ同和損保のビジネスやデータサイエンティストに求められるスキルレベルなど、現場を 熟知している田村氏を含めTDSEと共同でアイデミーの豊富なコンテンツから必要な研修を選定し、TDSEの集合研修と合わせて研修プログラムを構成するという大枠が決まった。 具体的には、4月から9月は基礎研修としてeラーニングを中心に分析力とビジネス力の基礎を学んで土台を作り、10月からは応用研修として実際の分析ケースを通じてビジネスでの活用を学ぶという構成だ。
こうして準備を進めていたところに大きな変化が訪れる。新型コロナウイルスの感染拡大だ。「4月から出社制限が実施され、 新人配属後も対面でのOJTは難しい状況でしたが、在宅勤務でもスキルを身に付けられる環境を準備していたことが、功を奏しました」と大沼氏は語る。TDSEの集合研修もオンラインで実施することができた。
実際に研修を受けた今年の新入社員、谷陽太朗氏は「ブラウザ上でプログラミング教育が受けられるので、PCのスペックや環境構築に煩わされることなく、Pandas や時系列解析、データの前処理など様々な内容をスピーディに学習できました。 わからないことがあった時に、アイデミーの質問ボックスに直接質問することもでき、フットワークの軽さという点でも非常に優れていると感じました。また、TDSEからはテレビ 会議で事例解説の研修を受け、お客さまが求めていることが理解でき、ゴールを意識して仕事に取り組めるようになりま した」と感想を語る。6 月以降は研修内容を新人同士で共有する場が設けられている。谷氏は「研修内容をどう実践するかなど、皆で議論ができ刺激になります」と話す。新たな形態での研修を受けたものならではの感想だろう。大沼氏は「オンラインで研修を行うというのは初めての試みでしたが、ア イデミーの画面上で各人の進捗状況を把握し、業務と研修を調整しながら順調に進めることができました」と基礎研修を評価する。
今回の成果を応用して、全社のデータリテラシー向上も
今後の検討テーマとして大沼氏が挙げたのは、新人教育以外への適用だ。「配置転換のメンバーやデータサイエンティストのさらなるスキルアップに応用すると同時に、他部署と連携 して社員向けの研修にも広げていけるのではと考えています」と大沼氏は語る。
データから成果を引き出すには、全社レベルでのデータリテラシーの向上が大きな鍵を握る。ウィズコロナの時代に向けた、あいおいニッセイ同和損保のデータ活用人財の育成への 挑戦は始まったばかりだ。「スムーズなデータ活用を実現する ために、今後も社内データ人財育成のよりよい方法について一緒に考えていきたい」と大沼氏は TDSE とアイデミーへの期待を語った。