2020年6月30日、ニューズピックスエンタープライズのライブ配信セミナーにて、株式会社アイデミー 代表取締役社長の石川聡彦が、
- なぜ製造業において積極的にAIが導入されているのか?
- 組織としてAIに取り組むフェーズとは?
- Aidemyで提供できるソリューション
について、講演した。
なぜ製造業において積極的にAIが導入されているのか?をテーマに石川がある興味深いニュースを交えながら、その理由を説明した。今回の記事ではこの事を取り上げる。
ソフトウェアとハードウェアを駆使したTeslaが
時価総額でTOYOTAを抜く
2020年6月10日、大きなニュースが報道されました。それは世界最大の時価総額を持つ自動車メーカーが、TOYOTAからTeslaになったことです。
もちろん、企業の評価は時価総額だけでは決められません。TOYOTAは多くの自動車を生産するだけでなく、膨大な雇用も創出していますし、売上規模も非常に大きいです。しかし将来的に生み出す利益は、Teslaの方が大きいだろうという評価を受けたのだと思います。
──なぜ時価総額でTeslaがTOYOTAを抜くことができたのでしょうか?
こちらについても、ニュースを交えながらご説明します。
2017年9月、アメリカのフロリダ州に超大型ハリケーン「イルマ」が襲来したとき、Tesla製の電気自動車はバッテリーが切れても走行でき、無事台風から逃れられたというニュースがありました。
もともとTeslaは75kWh型と60kWh型 の電気自動車を販売していました。しかし実際に積まれていたバッテリーは、両者同じ75kwh 型でした。つまり60kWh型の電気自動車でも、リミットを解除すれば75kWh分の走行が可能だったということです。
Teslaは緊急事態に機転をきかせて、ソフトウェアでハードウェアを制御することで、15kWh分のリミットを解除し、安全に災害を回避することを可能にしたのです。従来のようなインターネットに接続されてないハードウェアでは実現できなかったことです。このような技術力の違いにおいて、TeslaはTOYOTAより高い評価を受けたのだと思います。
では、なぜ製造業で積極的にAIが導入されているのかというと、ハードウェアをソフトウェアで制御することで、ビジネスモデルのフレキシビリティが実現し、ビジネスモデルそのものを作り変えることが可能だからだといえます。
AIとIoTは絶好の相性にあります。従来のハードウェアは、基本的にインターネットと接続されていませんので、製品は出荷されたときが最高の状態で、顧客とのタッチポイントは導入時もしくは故障時のみに限定されています。ところが、ソフトウェアとハードウェアが繋がっている製品をつくることにより、常に製品のアップデートができるようになり、そのタッチポイントは失われることはありません。
何故なら企業は顧客の製品の使い方のデータを収集でき、それを利用することで製品をアップデートする、このような好循環を生みだすことができるからです。つまり製品は常に“未完成”であり、顧客が製品を使えば使うほどより完成度の高い製品を実現できます。
AI/IoTによるビジネスモデルの変革
──顧客に与える価値はどうなるのでしょうか?
もちろん変わります。従来は出荷時点が製品として最高の状態であったハードウェアのビジネスは、製品のアップデートが繰り返されることで、製品がますます使いやすくなるという常に“未完成”なビジネスに変化すると思います。
たとえば、約15年前のMicrosoftのビジネスモデルは、Windowsを1ライセンス数万円で販売していました。今はサブスクリプション型のサービスも展開しており、顧客は月額数千円で利用できます。これはAdobeについても同じことが言えます。
一方でハードウェアのメーカーであっても、従来のフロー型のビジネスモデルからストック型のビジネスモデルに変化させることができると思います。従来のハードウェアのビジネスモデルは、基本的にフローの売り上げになるので、月次で売り上げが上下しやすいのが特徴でした。しかし、サブスクリプション型になると、売り上げが積み上がりますのでPLが安定します。AIとIoTを組み合わせることでビジネスモデルそのものが変化し、それに伴って顧客に与える価値もどんどん変化していくと思います。
これからはDXが業界を変革する時代
──AIブームは終焉をむかえるという意見についてどう思いますか?
たしかにAIは衰退期のまっただ中にいるという意見があります。ただ振り返ってみると、2012年にビックデータブーム、そして2015年にAIブーム、さらに2019年にはデジタルトランスフォーメーションブームが到来しました。
デジタルトランスフォーメーションは
- AI
- IoT
- ブロックチェーン
- クラウド
などの新しいデジタル技術を使って、業界そのものを変革していく考え方だと思います。つまりデジタルトランスフォーメーションの中にAIは内包されているので、AIブームは終焉をむかえるという表現は極端だと思います。
到来する様々なブームの本質として言いたいことは、
- データ、 AI、 デジタルトランスフォーメーション
- 働き方改革
- VUCA/CASEの時代
- Socitey5.0
これら全ての共通点として、ソフトウェアやデータをビジネスの中心に据えるという“変革”が起きていてるということです。その中でも、AIによる産業の“変革”はプロセスとプロダクトそれぞれにおいて進んでいると思います。
プロセスのイノベーションでは、たとえば製造業ですと、人間が取り組んでいた検査プロセスをAIの画像認識で自動化することで、工程の作業効率を改善することができます。一方でプロダクトイノベーションでは、自動運転のようにソフトウェアとハードウェアを融合させて、新しい製品を作るだけでなく、サービスの改善を進めていくことができます。
私はAIを使って産業の変革に挑戦することができれば、AIはまだまだ頭角を現すことができる可能性が残されていると思います。そしてAIをはじめとする先端技術を使って産業の変革に取り組む人や組織をご支援させていただくこと、つまり「先端技術を経済実装する」これをアイデミーのミッションとして掲げています。