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建設DXとは?建設業界でDXが進まない理由や課題と事例

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「建設業の課題を解決するためにDXを推進したい」

「建設DXの事例やメリットを知りたい」

そんな悩みをお持ちの経営者や現場責任者がいるのではないでしょうか。

建設業界では、「建設DX」という言葉が注目を集めています。

建設DXを推進することで、デジタル技術を活用して、設計から施工、維持管理までのプロセスを効率化するだけでなく、人材不足や生産性の低さといった業界特有の課題を解決することができます。

本記事では、建設DXの概要や、建設業界の課題・事例、DX推進するメリットや進め方と注意点、補助金や、建設DXでよく活用される技術をご紹介します。

目次

建設DXとは?

建設DXとは、AIやIoT、BIM/CIMなどの技術を活用して、設計や施工のプロセスを効率化し、建設現場に限らず建設業界のの生産性を大幅に向上させる取り組みです。

建設DXを推進すると、設計段階でのメリットとして、BIM/CIMの活用により、設計から施工までの情報が3Dモデルとして一元管理されるため、設計ミスや施工の手戻りを大幅に削減できます。

たとえば、設計段階で建物全体のエネルギー効率や材料使用量をシミュレーションすることで、環境負荷の低減とコスト削減を両立することが可能です。

次に、施工プロセスの効率化が挙げられます。IoTセンサーを現場に配置することで、重機の稼働状況や作業員の動きをリアルタイムで把握できます。

現場管理者は即座に判断を下し、無駄な作業や待ち時間を最小化することができます。また、AIを活用したデータ分析によって、施工中のリスクを事前に予測し、安全性の向上にも寄与します。

維持管理の段階でも、建設DXは重要であり、完成後の建物にIoTデバイスを設置することで、温度や湿度、エネルギー使用量などを継続的にモニタリングできます。

結果として、予防保全が可能になり、メンテナンスコストを削減しつつ、建物の寿命を延ばすことができます。

上記のように、建設DXは単なる効率化ではなく、設計・施工・維持管理の各段階で新たな価値を生み出し、業界全体の業務効率化や生産性を向上させることができます。

特に人材不足や働き方改革といった課題が顕著な中、DXの取り組みは、企業の競争力を強化するために大切です。

では、「なぜ今、建設DXが求められているのか?」

建設業の課題について、詳しく解説します。

建設DXが求められる理由と建設業界の課題

建設業界では長年、さまざまな課題が積み重なってきました。

建設DXが注目される背景には、建設業ならではの以下の課題が存在します。

  1. 若手の人材不足と高齢化術継承問題
  2. 他業界と比較した場合の生産性の低さ
  3. 働き方改革と2024年問題

3つの課題について、それぞれ説明します。

若手の人材不足と高齢化術継承問題

建設業界では、熟練したベテラン社員が次々と定年を迎える一方で、新たな若い人材がなかなか入ってきません。さらに、現場で培われた技術やノウハウが、効率的に引き継がれないという問題も深刻です。


出典:一般社団法人 日本建設業連合会

日本建設業連合会の資料によると、建設業就業者の36.6%は、55歳以上の高齢者です。全産業の55歳以上の就業者が31.9%であることと比較すると、建設業界の高齢化が進んでいることがわかります。

また、29歳以下の建設業就業者の若手は11.6%にとどまり、全産業の16.7%と比較すると、若手不足も深刻です。そのため、「継承者がいなくて困っている」「技術継承ができない」と頭を抱えている経営者も多いのが現状です。

生産性の低さ

日本の建設業界は、他業界と比較すると生産性が低いと言われています。作業の多くが手作業や現場判断に頼りがちで、効率が悪くなることもあります。


出典元:一般社団法人 日本建設業連合会

建設業の付加価値労働生産性は、2022年時点で、「2,885円/人・時間」です。一方で、全産業では、「4,642円/人・時間」です。

また、製造業は特に付加価値労働生産性が高く、「6,091円/人・時間」であり、さらに生産性を向上させるために、製造業でもDX推進の取り組みが行われています。

働き方改革と2024年問題

建設業の2024年問題とは、「働き方改革関連法」が適用される2024年4月までに建設業界で解決する必要のある労働環境問題を指します。

「働き方改革関連法」は、2019年4月1日に施行されました。正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」です。

法令は、働き方改革の一環として導入され、大企業では、2019年4月1日から順次適用され、中小企業では、2020年4月1日から順次適用されます。

前述したとおり、建設業界では、高齢化や労働人口が減少した結果、長時間労働が常態化していますが、時間を短縮することが難しい場面も多く、対応が遅れると大きな影響を受ける可能性があるため、建設業では、一部の働き方改革関連法案の適用に5年間の猶予期間が設けられていました。

働き方を改善し、人材を増やし、業務効率を向上させるために、建設DXを推進する必要があります。

法令に関する詳しい情報は、厚生労働省の「働き方改革関連法の概要と 時間外労働の上限規制」や、国土交通省の「建設業における働き方改革」が参考になります。

建設DXの事例

「建設業でDXを進めたくても、まずは事例を知りたい!」という方も多いでしょう。今回は、ジャンル別に分けていくつかの建設DXの事例をご紹介します。

3D測量

株式会社淺沼組では、構造物の耐震補強や修繕工事の効率化を目的に、3Dスキャナを活用した点群データ技術を導入しました。


出典:一般社団法人 日本建設業連合会|点群データ活用によるマッピングツールの構成

以下の方法を取り入れ、事前計画や現場管理を高度化しています。

  • 3Dスキャナの活用
    地上計測やドローン・作業船を用いて広範囲かつ高精度なデータを収集。
  • 専用ソフトとクラウドの利用
    • 「TREND-POINT」「TREND-CORE」などの専用ソフトで点群データを解析。
    • クラウド型プラットフォーム「めぐりす ai」でデータを共有・連携。
  • 地域業者との協働
    点群データを活用し、地域業者と連携して作業計画を効率化。
  • デジタルカルテの構築
    修復箇所や形状寸法の記録をデジタル化し、効率的な維持管理を実現。

この取り組みの結果、以下の成果が得られました。

  • 効率化の実現
    • 手戻り作業が減少し、現場管理の精度が向上。
    • 簡易操作可能なビューアで、計測データを現場で直接活用。
  • コスト削減と時間短縮
    • 資材の有効活用や作業効率の改善によりコスト削減。
    • 作業規制が軽減され、全体の工程が短縮。
  • スキル向上
    • 3Dデータの活用で現場スタッフの技術力が向上。
    • 地域業者のスキルアップにもつながり、協力体制が強化。
  • 持続可能な施工環境の構築
    • 環境負荷を軽減しつつ、生産性を向上。
    • デジタルツールによる情報共有で、事業全体の透明性が向上。

この取り組みは、建設DXの成功事例として評価され、さらなる普及が期待されています。

参考:一般社団法人 日本建設業連合会|点群データ活用によるマッピングツールの構成

UAV

株式会社大林組は、ドローン測量の効率化を目的として、クラウドベースのデータ管理システムを導入しました。このシステムは、ドローンで撮影した空撮画像をクラウドにアップロードするだけで、オルソ画像や点群データ、地形の面データを自動生成します。

従来の測量手法に比べて、専用ソフトのインストールや高性能PCの使用が不要となり、データ共有や作業プロセスが大幅に簡略化されました。

複数のプロジェクトを並行して処理できるため、効率性と迅速性が向上しています。


出典:一般社団法人 日本建設業連合会|UAV測量の効率化(くみき)

このシステムの導入により、以下の成果が得られました。

  • 作業効率の向上
    ドローン測量からデータ生成までの手間が削減され、短期間で高精度な測量が可能になりました。
  • データ共有の簡略化
    クラウド上でデータを一元管理することで、遠隔地からでもリアルタイムに情報を確認・共有できるようになりました。
  • 導入のハードルが低下
    操作が直感的で簡単なため、従来の測量ソフトよりも使用しやすく、新しい現場への導入が容易になりました。
  • 応用範囲の拡大
    災害復旧現場では、遠隔地から空撮データや点群データを即座に確認・活用できるため、迅速な対応が可能になりました。造成工事では、出来高管理に活用され、効率的な計画が実現しました。

クラウド技術の導入により、測量の負担が軽減されただけでなく、復旧作業や遠隔地との連携がスムーズになり、業務全体の効率化が進んでいます。

参考:一般社団法人 日本建設業連合会|UAV測量の効率化(くみき)

BIM/CIM

株式会社安藤・間が採用したGeOrchestra®は、地質評価AIとCIMを活用したデジタルツインアプリケーションです。このアプリは、地盤掘削作業中に採取されたスライムからAIで地質を解析し、その結果を3次元モデルとしてCIM環境に統合します。


出典:一般社団法人 日本建設業連合会|AI 評価と施工情報のデジタルツインによる施工管理と情報共有の向上

解析結果はクラウド上で自動処理され、モデルの更新もリアルタイムで行われます。ユーザーは、専用URLにアクセスするだけで施工情報を確認でき、端末を選ばずに利用可能です。

この技術は、特に深い地盤掘削や長尺アンカーを使用する工事において、削孔精度の向上と効率的な施工支援を可能にします。また、施工進捗に応じたデータの可視化により、関係者間の情報共有を促進し、リスク回避や作業の最適化に寄与します。

GeOrchestra®の導入により、以下の成果が得られました。

  1. 迅速かつ高精度な地質評価
    深層学習を活用し、専門技術者に匹敵する精度で評価が可能となりました。
  2. リアルタイムの施工情報更新
    AIが自動解析を行い、施工進捗に応じた3次元モデルをリアルタイムで更新しました。
  3. 情報共有の強化
    タブレットやPCなど、さまざまなデバイスで関係者が同時に情報を閲覧し、円滑なコミュニケーションが実現しました。
  4. 柔軟な視点操作
    360°自由な視点操作や任意断面の抽出が可能で、複数のユーザーが干渉なく作業を進められる環境を提供しました。
  5. 施工リスクの低減
    先行データを基にした予見や気付きが促進され、施工方法の改善やリスク回避につながりました。
  6. アーカイブの構築
    可視化された情報が保存され、維持管理フェーズでの活用が可能となり、長期的な管理コストの低減が期待されました。

GeOrchestra®は施工精度と効率の両面で大きな進化をもたらし、特に困難な地盤条件下での工事を効果的に支援しました。

参考:一般社団法人 日本建設業連合会|AI 評価と施工情報のデジタルツインによる施工管理と情報共有の向上

VR・MR・AR

東亜建設工業株式会社は、鋼板セルの製作ヤードを仮想現実(VR)空間で再現し、遠隔地からの現場確認と危険予知を実現しました。


出典:一般社団法人 日本建設業連合会|鋼板セル製作ヤードのV R 化

このプロジェクトでは、構造物や地形の3次元モデルを統合し、BIM/CIMで活用したデータやUAV写真測量で取得した点群データを活用しました。VR空間は市販のソフトウェアを用いて比較的簡単に構築され、HMD(VRゴーグル)を装着することで、作業員が仮想的に現場を体感できる環境が提供されました。

使用されたソフトウェアにはAutoCAD、SketchUp Pro、TREND CORE、Metashape Professionalなどがあり、ドローンや360度カメラといったデバイスと組み合わせることで、詳細な現場データの取得と再現が可能になりました。

VR技術の導入により、以下の成果が得られました。

  1. 危険予知の向上
    作業員が実際の現場に入る前にVR空間で機械配置や危険個所を把握できるようになり、安全性が向上しました。
  2. 移動時間の削減
    遠隔地にいる職員が移動することなく現場状況を確認できたため、業務効率が大幅に改善されました。
  3. 現場教育の強化
    新規入場者向けの教育にVRを活用することで、現場環境をよりリアルに体感しながら学ぶことが可能になりました。
  4. 柔軟な視点での現場確認
    上空からの俯瞰や地上での踏査など、多角的な視点で現場を確認することで、作業計画の精度が向上しました。

この取り組みは、仮想空間を活用した現場管理の新しい可能性を示し、効率性と安全性を同時に向上させる結果をもたらしました。

参考:一般社団法人 日本建設業連合会|鋼板セル製作ヤードのV R 化

自動・自律ドローン

青木あすなろ建設株式会社は、山岳トンネルの坑内での定期巡回点検を効率化するため、自律飛行ドローンを導入しました。


出典:一般社団法人 日本建設業連合会|自律飛行ドローンを利用した坑内無人巡回システム

非SLAM型の屋内自律飛行システムを使用し、特徴点の少ないトンネル内でも安定した飛行を実現しました。

このシステムは、ドローンが搭載するカメラで飛行指示情報を読み取り、自律的に飛行します。充電ポートを始点と終点に設置し、遠隔地からのPC操作で全長約970メートルの坑内を自動巡回させ、点検映像を事務所などのPC上で確認できる仕組みを構築しました。これにより、点検作業の省力化が達成されました。

使用されたドローンはFlareDynamics社製で、障害物検知センサーや自動充電機能を備えており、最大飛行距離は1キロメートルです。点検は大野油坂道路大谷トンネルの工事で実施され、国土交通省近畿地方整備局の発注工事に適用されました。

自律飛行ドローンを導入することにより、以下の結果が得られました。

  1. 省力化の実現
    事務所から遠隔で点検が可能となり、従来必要だった現場への移動や坑内での歩行による点検作業が不要になりました。
  2. 生産性向上
    ドローンによる自律飛行点検が効率化を推進し、職員の作業負担が軽減されました。
  3. 映像による迅速な確認
    ドローンが撮影した映像を遠隔地で即座に確認できるため、点検作業がスムーズになりました。

この取り組みは、山岳トンネルの点検作業の効率化だけでなく、現場作業員の安全性や業務の負担軽減にも寄与する結果をもたらしました。

参考:一般社団法人 日本建設業連合会|自律飛行ドローンを利用した坑内無人巡回システム

ICT

株式会社竹中土木は、大阪府枚方市の宅地造成現場において、マシンガイダンスを活用した構造物掘削施工を実施しました。


出典:一般社団法人 日本建設業連合会|ICT建機を用いた構造物掘削施工

この取り組みでは、擁壁の設計データを3次元化し、ICT建機に取り込むことで従来の手作業による丁張り設置を不要にしました。また、UAV(ドローン)を使用した写真測量によって現況地形を確認し、3次元設計データと組み合わせて効率的な掘削施工を実現しました。

さらに、GNSS測量機器を活用することで掘削位置の特定や出来形確認を迅速化し、生産性と安全性の向上を目指しました。ICT建機のモニターを利用することで、バックホウのオペレーターが施工状況を正確に把握し、手元作業員の配置を不要にしました。

マシンガイダンスを活用した構造物掘削施工を実施では、以下の結果が得られました。

  1. 生産性の向上
    • 丁張り作業を省略することで準備から施工までの手順を大幅に短縮しました。
    • GNSS測量機器を併用し、従来は2~3人で行っていた測量や出来形確認作業を1人で行えるようにしました。
  2. 安全性の向上
    • ICT建機を使用したモニターによる施工管理により、手元作業員が不要となり、重機と作業員の近接作業がなくなりました。これにより事故リスクが低減しました。

この取り組みは、施工の効率化だけでなく、安全性の確保にも大きく貢献しました。初期投資が課題ではあるものの、建設現場における労働力不足への対応策としても注目されています。

参考:一般社団法人 日本建設業連合会|ICT建機を用いた構造物掘削施工

ロボット

株式会社NIPPOは、GNSSを活用した自動マーキングロボットを導入し、舗装準備工や路面切削準備工の作業を効率化しました。


出典:一般社団法人 日本建設業連合会|ロボットによる路面マーキング作業の省力化

このロボットは、あらかじめ設定された線形データに基づき、自動で路面にマーキングを行うシステムです。タブレットで簡単に操作でき、公共座標に対応した線形データを基に正確なマーキングを実現します。従来の人力によるマーキング作業の負担を軽減し、安全かつ効率的な作業が可能になりました。

GNSSを活用した自動マーキングロボットを導入した結果、以下の効果が得られました。

  • 効率化
    作業時間と人員を最大80%削減し、従来の方法に比べて効率が約10倍向上しました。
  • 負担軽減
    作業員の身体的負担が大幅に軽減され、快適な作業環境を提供しました。
  • 安全性向上
    修繕工事などで供用車線近くの危険なエリアでの作業を削減し、現場の安全性が向上しました。

この技術は、マーキング作業の省力化を図るだけでなく、効率性と安全性を両立した画期的な取り組みとして、多くの建設現場での活用が期待されています。

参考:一般社団法人 日本建設業連合会|ロボットによる路面マーキング作業の省力化

上記が、建設DXの事例です。もっと建設DXについて知りたい方は、日本建設業連合会が運営する建設DX事例集が参考になります。

建設DXを進めるメリット

建設DXは、多くのメリットがあります。下記は、建設業でDXを進めた場合のメリットです。

  1. 業務を効率化できる
  2. 安全性が向上する
  3. 労働環境が改善する
  4. 生産性が向上する
  5. 情報を共有できる

それぞれ、解説します。

業務を効率化できる

建設DXを導入することで、これまで時間や手間がかかっていた作業・プロセスを効率化できます。たとえば、BIM/CIM(ビム・シム)を活用すれば、設計から施工までの情報を一元管理でき、手戻り作業や確認ミスを大幅に減らせます。

安全性が向上する

建設現場では安全性の確保が最優先です。ドローンで危険な箇所を事前に点検したり、AIでリスクを予測する仕組みを導入することで、事故のリスクを減らせます。

特に、高所作業や地盤調査など、従来は人がリスクを負っていた作業で大きな効果を発揮します。

労働環境が改善する

建設DXの導入は働き方の改革にもつながります。データ共有や業務管理がデジタル化されることで、現場とオフィス間の連携がスムーズになり、無駄な移動や手作業が減少します。

例えば、現場監督が別の場所からリアルタイムで状況を把握したり、図面の確認や報告書の作成をオフィスで行うことが可能です。

また、施工準備や一部の管理業務はリモートで対応できるため、現場にいる時間を最適化できます。建設DXは、効率的で柔軟な働き方を実現することができるでしょう。

生産性が向上する

建設DXを導入することで、全体の生産性が大幅に向上します。たとえば、作業スケジュールや資材管理をデジタルで一元化することで、無駄な作業を減らし、効率よくプロジェクトを進められます。

また、AIや自動化技術を取り入れることで、繰り返し作業や単純作業を効率化し、現場作業に集中できる環境を整えられます。これにより、限られたリソースでより多くの成果を出せるようになります。

情報を共有できる

建設DXは、関係者間の情報共有を格段にスムーズにします。クラウドを活用すれば、図面や進捗状況、現場写真などをリアルタイムで共有でき、現場とオフィスの間での連携ミスを防ぎます。

例えば、設計の変更点をすぐに共有し、全員が同じ情報を基に作業を進めることで、トラブルや手戻りを防ぐことが可能です。迅速な情報共有は、プロジェクト全体の成功を支える重要なポイントです。

建設DXを進めるときの注意点

建設DXの導入には多くのメリットがありますが、課題も避けて通れません。

以下のポイントに注意して建設DXを進める必要があります。

初期投資が必要である

DXを進めるためには、新しい技術やシステムを導入するための初期費用が必要です。たとえば、BIM/CIMの導入やドローンの購入、専用ソフトウェアのライセンス料など、まとまった資金が求められます。

特に中小企業では「費用対効果が見えにくい」と感じることも少なくありません。

DX人材の確保・育成しなければならない

デジタル技術を使いこなす人材が不足しているのも大きな課題です。DXにはITやデータ分析のスキルが必要ですが、建設業界ではこうした専門知識を持つDX人材がまだ少ないのが現状です。

既存の社員にデジタルスキルを習得してもらうための教育や研修を計画的に進める必要があります。

現場とのデジタル格差を埋めなければいけない

デジタル技術は便利ですが、現場で働くすべての人がすぐに対応できるわけではありません。熟練の職人さんや現場管理者の中には、「これまでのやり方が一番」と考える方も多く、デジタル化への抵抗がある場合があります。

外部に委託せずに、自社で可能な範囲でDXを内製化することで、現場とのギャップを埋めたり、現場とオフィスの連携を深めることも検討してみましょう。

また、DPASの結果を元に、DX推進に向けて現状とのギャップを特定することで、DX実現までの最短経路を見つけるのも良いでしょう。

建設DXで活用される主要な技術

建設DXを進めるためには、さまざまなデジタル技術の導入が欠かせません。

以下では、特に注目される主要な技術をご紹介します。それぞれの技術がどのように現場を変えるのか、具体的に見ていきましょう。

BIM/CIM

BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)は、建築や土木工事における設計から施工、維持管理までを一元管理する技術です。


出典:国土技術政策総合研究所|BIM/CIMポータルサイト|国土交通省

3Dモデルを使って建物や構造物の情報を視覚化できるため、次のような効果が期待できます。

  • 設計と施工の間で情報の行き違いを防ぐ
  • 工期の短縮やコスト削減が可能
  • 維持管理の段階でもデータを活用できる

下記では、国土交通省で実施したBIM/CIM活用業務・工事の効果や課題を確認できます。

BIM/CIMを導入した企業では、建物の設計ミスを事前に発見し、生産性を向上させることができるでしょう。

AIとIoT

AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)は、建設現場での効率化や予測に大きな力を発揮します。たとえば、AIは次のような場面で活用されています。

  • 過去のデータを分析して、工事のリスクやトラブルを事前に予測
  • 効率的な作業スケジュールの自動作成

一方、IoTはセンサーを使って現場の状態をリアルタイムでモニタリングします。これにより、重機の稼働状況や作業員の安全管理を行い、無駄や危険を減らすことができます。

一般社団法人「土木工事現場のIoTガイド」では、計17つのIoT対応機器の例が紹介されています。

国土交通省では、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取組であるi-Construction(アイ・コンストラクション)を進めています。
引用:国土交通省

AIでの画像認識などの技術は、小売りDXでも活用されており、幅広い業界で研究が進んでいます。社内にAI人材がいると、最新の技術を取り入れて業務改善もしやすいかもしれません。

ドローンと3D測量技術

ドローンと3D測量技術は、建設現場での安全性と作業スピードを劇的に向上させます。ドローンを使うことで、次のような利点があります。

  • 高所や危険な場所の調査を安全かつ迅速に行える
  • 広大な敷地の測量を短時間で完了できる

さらに、ドローンで収集したデータを3Dモデル化することで、設計や計画の精度が向上します。

農業DXや工場管理にも活用されているドローンは工場DXは、建設現場での手戻り作業が減り、プロジェクト全体の効率が向上します。

クラウドとSaaSサービス

建設DXには、クラウドやSaaS(Software as a Service)といったデジタルプラットフォームの活用も欠かせません。これらの技術を使えば、以下のようなデータ共有が簡単に行えます。

  • 設計図や施工データをリアルタイムで共有
  • オフィスと現場の連携を強化
  • データのバックアップやセキュリティ対策も万全

特に、複数の現場が同時進行している場合、クラウドを活用することでチーム全体の情報共有がスムーズになります。これにより、意思決定のスピードが上がり、効率的な運営が可能になります。

具体的にどのようなSaasツールを活用すべきか、一例をご紹介します。

Photoructionは、建設業向けのオールインワンプラットフォームで、現場業務の効率化と品質向上を実現します。クラウド型SaaSとAIを活用し、写真管理や工程表作成、図面管理などを一元化します。

建設BPOサービスにより、配筋検査や書類作成などを半自動化し、作業の標準化を推進します。カスタマイズ可能な設計で、企業のDX戦略に対応可能であり、ISO 27001認証取得の高いセキュリティと充実のサポート体制で安心して利用できます。

業務の属人化を解消し、建設プロジェクト全体の生産性を向上させるために必要な建設業のSaasツールです。

Sitrom-CCは、土木建設業向けのクラウド型工事管理・管理会計システムで、現場と経営をつなぎ、生産性と収益性の向上を実現する建設業のSaasです。

現場で入力したデータをリアルタイムで経営部門と共有し、工事原価や進捗、勤怠管理を一元化し、属人化や情報の断絶を防ぎ、経営判断を迅速化します。

スマートフォン対応や協力会社との連携機能も備え、柔軟なカスタマイズが可能であり、IT導入補助金にも対応しており、成長する企業の管理課題を効率的に解決します。

ダンドリワークは、建設業界向けの施工管理アプリで、現場資料や工程表をクラウドで一元管理し、情報共有や進捗確認を効率化します。スマホやPCからリアルタイムで最新情報にアクセス可能で、通知や権限設定も柔軟に対応しています。

現場ごとの受発注や写真管理を簡単に行え、経理作業も効率化し、複数元請会社の現場も1アカウントで統合管理できます。導入社数10万社、ユーザー数17万人以上の実績があり、使いやすさと徹底した導入サポートが特長です。

これらの技術は、建設DXを成功させるためのサポートとなります。

それぞれの技術を適切に組み合わせることで、建設業界の大きな変革を実現することができるので、「どれから取り組めばいいかわからない」という場合は、自社の課題に合わせて優先順位をつけてみましょう。

建設DXの進め方

段階的かつ計画的に進めることで建設DXを成功させることができます。

下記は、建設DXを進める手順です。

  1. 自社の課題を洗い出す
  2. 適切な技術とツールを選定する
  3. 試験運用と改善を進める
  4. 全社展開と効果測定を行う

手順に従って説明します。

建設DXの進め方①自社の課題を洗い出す

まず最初に行うべきは、自社が抱える課題を明確にすることです。

たとえば、次のような問いを自社内で共有すると、課題が見えてきます。

  • 作業の中で無駄になっている時間やコストはどこか?
  • どのプロセスでミスが多く発生しているのか?
  • 人材不足や技術継承で困っている部分はどこか?

「課題を見つける」というと少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、現場の声をヒアリングしたり、業務フローを整理してみるだけでも多くの課題が見つかることでしょう。

問題点が明らかになれば、その解決策をDXでどう実現するか考えてみましょう。

建設DXの進め方②適切な技術とツールを選定する

課題が見えたら、その解決に最適な技術やツールを選びます。

たとえば以下のような技術が考えられます。

  • 作業効率を上げたい → BIM/CIMやクラウドサービス
  • 現場の安全性を高めたい → ドローンやIoTセンサー
  • 生産性を向上させたい → AIを使ったデータ分析ツール

技術やツールを選ぶ際には、自社の予算やリソースを考慮することも大切ですが、すべての最新技術を取り入れる必要はありません。

社内でDX研修を進めながら、必要な技術やツールを検討したり、「これだけは解決したい!」という優先事項に集中してみるのも良いでしょう。

建設DXの進め方③試験運用と改善を進める

いきなり全社導入を目指すのではなく、一部のプロジェクトや現場で試験的に運用を始めます。これにより、次のようなメリットがあります。

  • 実際の現場でどの程度の効果が出るのか確認できる
  • システムに不具合や改善点がないかを事前に把握できる
  • 現場スタッフが新しい仕組みに慣れるための時間を確保できる

試験運用の結果をもとに、「どの部分を改善すればより効果が高まるか」を明確にしながら進めていきます。

建設DXの進め方④全社展開と効果測定を行う

試験運用で成果が見えてきたら、全社的に展開します。

この段階では、導入後の効果を定期的に測定し、PDCAサイクルを回すことが重要です。

  • DXによってコスト削減や効率化がどれほど実現したかを数値化する
  • 現場スタッフからフィードバックを集めて運用方法を改善する

全社展開後も、定期的な改善を続けることで、DXの効果を最大化できます。

また、DXを進める過程で社内にノウハウが蓄積されていけば、DX人材の育成にもつながり、さらに新しい技術を取り入れる際にもスムーズに対応できるようになります。

建設DXの導入は一度で完成するものではなく、継続的な改善が求められます。まずは自社にとって必要な部分から取り組み、一歩ずつ着実に進めることを意識してみてください。

中小企業が建設DXを進めるには?

建設DXは、大手企業だけでなく、中小企業にとっても重要な取り組みです。しかし、限られたリソースの中で進めるには工夫が必要です。

以下では、特に中小企業が取り組みやすい方法を3つの観点から解説します。

限られた予算での取り組み方

中小企業にとって、DXの導入にはコストが大きなハードルです。しかし、すべてを一気に進める必要はありません。

以下のように、段階的なアプローチが効果的です。

  • 小さなプロジェクトから始める
    たとえば、BIM/CIMの導入でも、まずは一部のプロジェクトで試験的に使用することで、必要な投資を最小限に抑えられます。
  • 無料または低コストのツールを活用する
    クラウド型のプロジェクト管理ツールや、無料のトレーニングプログラムを活用するのも一つの方法です。
  • 既存の設備を活用する
    新しい機器を購入するのではなく、既存の設備にデジタル技術を組み合わせて改善する方法もあります。

これにより、初期費用を抑えながら、少しずつDXの効果を実感できます。

外部のベンチャー企業を活用する

建設DXを進める際には、自社だけで全てを解決しようとせず、外部の力を借りることも大切です。

建設業界向けにDXが得意なベンチャー企業もあるので、東京ビッグサイトなどで開催される「建築DX展」などもチェックしてみると良いでしょう。

  • ニッチなソリューションを提供
    ベンチャー企業は、特定の課題に特化した革新的な技術を提供していることが多いです。たとえば、ドローンを活用した測量や、小規模工事向けのクラウドサービスなどが挙げられます。
  • 柔軟なサービスプラン
    ベンチャー企業は、中小企業向けに柔軟な価格設定やカスタマイズ可能なサービスを提供していることが多いため、導入のハードルが低いです。
  • 実証実験や共同プロジェクトに参加
    ベンチャー企業と連携して、実証実験に取り組むことで、リスクを抑えながら新しい技術の導入を試せます。

DXに活用できる補助金や助成金を確認する

中小企業が建設DXを進める際には、政府や自治体が提供する補助金や助成金を活用することで、負担を大きく軽減できます。

建設業のDXに活用できる補助金を5つ紹介します。

1. 事業再構築補助金

事業再構築補助金は、中小企業が新分野展開や事業転換を行う際に支援を受けられる補助金です。認定経営革新支援機関や金融機関による確認が必要で、補助事業終了後には付加価値額や従業員1人あたりの付加価値額を年平均3~5%以上増加させる計画が求められます。補助金額が3,000万円を超える場合、金融機関の追加確認が必須です。

2. 小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路拡大や制度変更に伴う経費を補助するものです。従業員数が5~20人以下の小規模事業者が対象であり、事業実施後に補助金が交付される仕組みのため、自己負担が必要です。また、大企業に100%出資されている法人は対象外です。

3. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、製造業や建設業が生産プロセス改善や生産性向上を目的としたプロジェクトに利用できる補助金です。資本金3億円以下、従業員300人以下の要件を満たした中小企業が対象で、通常枠やデジタル枠、グリーン枠など複数の枠から選択可能です。

4. IT導入補助金

IT導入補助金では、DX化や業務効率化を目的としたITツール導入を支援しています。補助金を活用することで、BIM/CIMの導入や3次元CADの活用により、データ連携の効率化や提案力向上などを実現した事例があります。枠組みは企業の課題に応じて選べます。

5. 事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継やM&Aに伴う費用を支援する補助金です。新事業設立やDX化を対象とする「経営革新事業」、M&Aの専門家活用費を補助する「専門家活用事業」、事業再編や廃業費用を補助する「廃業・再チャレンジ事業」の3類型があります。建設業での承継では、2020年以降、許可の再取得が不要となり、補助金の活用で事業承継やM&Aがさらに促進されることが期待されています。

補助金を活用するためには、申請書類の準備や審査が必要ですが、多くの場合、商工会議所や専門のコンサルタントがサポートしてくれるため、積極的に相談してみましょう。

今後の建設DXはどうなる?

建設DXは、建設業の業務を効率化して、生産性が向上することが理解できたかと思います。

DXは、業種業界問わず、進化を続け、新しい技術が現場の作業を支えるでしょう。

今後、建設DXがどのように変化していくのか考察していきます。

リアルタイムでのデータ活用

5G通信が普及すると、現場とオフィスでのデータ共有がスムーズになり、作業の進み具合をリアルタイムで確認できるようになります。たとえば、建設機械の動きや現場の状況をその場で把握できるので、問題が起きてもすぐに対応できます。

また、計測データをそのままクラウドに送る仕組みがあれば、設計変更や修正がすぐ反映されます。これにより、無駄なやり取りや移動が減り、時間とコストを大きく節約できます。

MR技術で施工ミスを防げる

MR(複合現実)という技術を使えば、現場で完成後の建物をその場で確認することができます。これにより、設計図と実際の現場の違いをすぐに見つけることができ、施工ミスを防ぐことが可能です。

さらに、建物の内部構造や配管の配置をリアルに表示することで、現場での確認が簡単になります。この技術は、現場スタッフやお客様との話し合いもスムーズに進める助けになります。

環境に配慮した建物作りが一般化する

環境に配慮した建物づくりが一般化する可能性もあるでしょう。

  • エネルギー管理が進化
    建物の温度や照明をセンサーで自動調整する仕組みが広がり、エネルギーの無駄遣いを減らします。
  • 再生可能エネルギーを活用
    太陽光や風力など、自然エネルギーを取り入れる建物が増えています。これにより、環境への負担を抑えた運用が可能です。
  • リサイクル素材の利用
    再利用可能な建材を使う動きが進み、解体後の廃棄物を減らせます。これを管理するデジタルツールも登場し、資材選びがより簡単になっています。

現場の働き方が変化する

建設DXは現場での働き方を大きく変えます。

  • 遠隔での施工管理
    ドローンやカメラを使えば、現場に行かずとも作業状況を確認できます。これにより、移動時間が減り、効率的に仕事を進めることができます。
  • 作業の自動化
    AIを使えば、地盤調査や施工計画の作成が自動化され、作業のスピードと精度が上がります。
  • 安全性の向上
    作業員がスマートデバイスを身に着けることで、危険エリアへの進入や体調不良をリアルタイムで監視し、事故を防ぐ仕組みが整います。

Aidemyでは、DXに関する多くの業種業界の知見があります。興味のある方は、資料をダウンロードしてみてはいかがでしょうか。

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