AI人材における「人事戦略」の課題と解決に向けた取り組み
【インタビュー:株式会社ギブリー新田章太氏】

プログラミング教育の必修化やデジタル庁の発足決定など、政府主導でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む背景には、AIを中心とする先端技術を扱う人材の不足があります。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年にはIoTやAIに関わる先端人材は55万人不足すると試算されており、民間企業においてもAI人材の育成や採用、特にビッグデータを扱うデータサイエンティストの採用が大きな課題となっています。

このような課題についてどう取り組むべきか、株式会社ギブリー取締役の新田章太氏に「AI人事戦略」に関するソリューションを解説いただきました。

新田 章太 氏

株式会社ギブリー取締役兼trackプロダクトオーナー

2012年3月に筑波大学理工学群社会工学類経営工学主専攻を卒業。学生インターンシップ時代に「エンジニア」領域に特化した支援事業を株式会社ギブリーにて立ち上げ、入社。現在は取締役を務める。オンラインプログラミング学習・試験ツール等の自社サービスを立ち上げ、同社のHR tech部門を管掌。また、日本最大規模の学生ハックイベント、JPHACKSの組織委員会幹事を務めるなど、若い世代のイノベーターの発掘・支援にも取り組んでいる。

track

エンジニアの採用や育成支援にフォーカスした「プログラミング学習・試験プラットフォーム」。エンジニアの実務力を正しく評価するための、プログラミングスキルチェックが実現できる試験機能と、習熟度に合わせたプログラミング学習が実現できる学習機能を搭載。採用選考時におけるプログラミングスキルの見極めをはじめ、入社後のプログラミング研修や開発チームのスキルアセスメントなど、スキルファーストなHRソリューションとして、エンジニアの採用から入社後の「研修・育成」までをワンストップで支援。

 

AI専門部隊を組織できない現状

ーー 日本企業のAI導入における課題は具体的にどのようなものがあるでしょうか。

新田氏

企業内でAIの導入を進めるステップとして、まずは会社組織の経営陣がAIの重要性を理解し投資予算を作る、そしてその次にAIを推進する専門部隊(AI推進室やDX推進室)を社内に設置するという流れがセオリーとなっています。では、部署を新設したらその次には何をするか。それは、社内から適任者となる人材の抜擢、あるいは外部からの人材採用をすることによる人材の配置です。

弊社では特にこのAIという領域における適切な人材の獲得や配置、社内での育成などの「人事戦略」というフェーズに最も課題があるのではないかと考えています。

AI白書2020によると、AIの推進に関心を持っている企業は調査対象企業全体の80%近くとなっており、AI活用の重要性が高まり多くの企業で動き出しが始まっている中で、実際にAIを導入している、あるいはPoCを実施してる企業はわずか10%未満となっており、何かがボトルネックとなりプロジェクトが進んでいないのが現状です。また、AI導入を検討するにあたっての課題調査の結果、自社内でAIについての理解・知識が不足しているAI人材が不足していることを課題としてあげている企業が多い結果となっており、AI人材における人事戦略の課題が深刻であるかがこの調査からも窺えます。

そもそも「AI人材の定義」ができないことがボトルネックに

ーー どのような人事課題を持たれている企業が多いのでしょうか?

新田氏

当社でも、実際に会社として活かせるデータセットを持っており、これからAIプロジェクトを推進する組織を作っていきたいというお客様からお問い合わせをいただくのですが、「どのような組織を作らなければならないのか、あるいはどのようなスキルを持った人材を採用していくことによってデータを活用したビジネス創造に結びつけていくのか、イメージが湧かない」という旨のお問い合わせや、お悩みを抱える人事担当者が多い印象を受けています。

中でも最も多い内容としては、「AI人材におけるスキルマップを作りたい」というものです。これからAIを導入し推進する組織をつくる際に、まずはどのようなスキルを持った人材をどのぐらい配置していくのかなど、具体的な組織構造を落とし込まなければならないのですが、そもそもAI人材の定義ができていないので採用や異動などの人事アクションをスタートをすることができない、ボトルネックが生まれています。

ーー どちらかというと「AI人材やデータサイエンティストの採用」そのものが、需要に対しての供給量が少ないために困難な課題であるイメージを持っていました。

新田氏

採用自体が難しいという事実はあると思っています。例えば、新しくAI組織やDX推進室を作るケースにおいて、企業の選択肢としては新規で採用するか社内からメンバーをアサインをするかの二択です。新規採用をする際、中途(経験者)採用と新卒採用という二択になりますが、どちらの選択肢が良いのか、また中途採用ならどのようなスキルや経験を持っている人がいいのかという課題で行き詰まり、プロジェクトがストップしてしまうことがあります。

「AI人材」の細分化したスキルの定義がファーストステップ

ーー それらの企業はどのようにして課題解決に向かえば良いのでしょうか。

新田氏

AIにまつわる求人として「データサイエンティスト」「AI・機械学習エンジニア」「データアナリスト」など、様々な職種の求人を目にすることがありますが、それぞれの職種において具体的にどのようなスキルが求められているかをすぐに答えられる人は、そう多くはないのではないでしょうか。

AIという言葉は非常に広義的な意味合いで曖昧です。そのため、まずはAI人材スキルをより具体的に細分化して定義することが重要だと思っています。

まず技術的な観点としては、AI技術にはいくつかの階層が存在しています。そもそもデータを扱う上で必要なデータ活用技術、データを学習して予測をするための機械学習技術、さらにその代表的な手法としてのディープラーニングといった具合です。これらの技術的な階層を理解し、今自社にはどのレベルの技術が求められているのかを理解することが重要です。

データ活用技術は最も広域な領域です。例えば企業内でAIプロジェクトを始める上では、そもそも分析することが可能なデータセットを用意しなければなりません。そこには、分析可能なデータを整理するための画像処理技術、形態素解析等の「データ加工スキル」が必要です。

そして、得られたデータから必要な予測をするための数学の知識、統計解析、アルゴリズムなどの「データ分析スキル」が必要です。さらに、大規模で複雑なデータから特定の予測をするための学習モデルを構築する「機械学習スキル」に発展していきます。

技術領域だけではなく、AIを活用する上ではビジネスとのバランスも考慮する必要があります。
なぜならば、ただ闇雲にAIを利用するのではなく、AIを「活用する」には、そもそも必要なデータは何かを考え、どのような分析をおこなうことが課題の解決につながるか、という視点が重要であり、それには自社のビジネスにおける体系的な理解が必要だからです。
実際にAI白書をみてみると、このAI技術領域の深さとビジネス的な観点を掛け合わせ、

・AIを活用した経営・マネジメント層
・AIを活用した製品・サービスを企画できるAI事業企画
・先端的なAIアルゴリズムを開発するAI研究者
・AIを活用したソフトウェアやシステムを実装するAI開発者
・AIツールでデータ分析をおこない、自社の事業にいかす人材

という表現を用いています。

このように、自社のAI導入フェーズに合わせて必要なスキルを理解し、ビジネスとしての経験や知識もかけあわせ、多面的な軸から「AI人材」の定義・スキルを細分化することで、いつどのタイミングでどのような技術を持った人材を採用すべきかの判断につなげることができます。闇雲に採用活動をスタートする前に、まずはこの定義を進めることがファーストステップとして重要です。

AI人材のスキルの可視化で自社に必要なAI組織構築の実現へ

ーー 貴社ではどのようなサポートを実施されているのでしょうか?

新田氏

当社が提供する「track」というサービスを通じて、AI人材を採用するための母集団の形成やAI人材のスキルチェックをおこない、お客様の課題解決のお手伝いをしております。

ーー具体的にスキルチェックとは、どのようなことをされているのでしょうか。

新田氏

前述したように、まずはお客様が求める「AI人材」の人物像の定義と必要なスキルを具体的に明確化します。ですが、多くの人事担当者はスキルを明確化するだけでは結局、「自社でそのスキルを持った人が誰なのかがわからない」「採用候補者が必要スキルを持っているのか判断ができない」というスキル見極めの課題が残ってしまいます。

そこで、trackを用いて、その人材に必要なスキルアセットに基づいた専用のプログラミング試験を作り、社内の人材や候補者がスキルをきちんと持っているかどうかを可視化することをサポートしています。これにより、ポジションに見合ったスキルを持った人材の採用や自社のタレントファインディングを行い、適任者をアサインしていく手順を構築するお手伝いをしています。

ーー trackの魅力について教えていただけますか。

新田氏

世の中に存在するアセスメントツールは基本的に知識(ナレッジ)ベースになっています。例えばAIで言うとディープラーニングやニューラルネットワークとは何かという「知識を測る」ような内容です。知識は単に知っているか知らないかの差なので、Googleで調べたりすれば簡単にわかってしまうものでもあります。trackではナレッジだけではなく「スキルを測る」形式になっているのが魅力です。具体的には、与えられたデータセットに対してプログラムを書いて要求を満たす分析をすることができるのか、という「スキルを測る」問題を出題することができます。

ーー母集団形成についても具体的に教えていただけますか。

新田氏

そもそも採用が難しいという課題の要因として、自社が求めるAI人材がどこにいるのかという「ため池」がないことからAI系の人材にリーチできないという点があります。求人は出しているものの、自社でデータサイエンティストを採用していることが人材市場に認知されていない・自社の求人をどの媒体に出稿すれば採用につながるのかわからないというような課題です。

とりわけ製造業などの非IT産業の企業においては、AIに対してアクセルを踏んでいることや、AI人材を採用していることを明らかにして、企業ブランディングや認知形成をしていく必要があります。

その中で、弊社では「track」を活用した企業独自のAI特化型のコンペティションやオンラインイベントの開催を通じた企業の採用ブランディングの支援をしています。

また、コンペティションを開催するだけではなく、そこからタレントプール(母集団)を作り、採用につなげていくまでのお手伝いをさせていただいています。

自社の独自データを可能な限り利用した専用のデータサイエンスの問題を作ることによって、求人だけ出しても集まらない潜在的なAI人材にアプローチをすることや、「こんなデータを扱えるのか」と技術者に対して自社のデータのユニークさ、仕事としての面白さを伝えることにもつなげることが可能です。

AI人材のスキルの可視化で適任者を発掘しAIチームの内製化につなげる

ーー改めて、AI人材の採用など人事戦略における課題に取り組む企業のファーストステップとして、どのようなことから始めるのが良いでしょうか。

新田氏

もし社内に適任者がいらっしゃらない場合でも、外部の知見のあるパートナーに依頼をしながら、社内でAIプロジェクトを推進することは可能かと思います。ですがAI領域においても、システム開発で外注を利用するのと同様に、いつまでも外注し続けるのはコストもかかりますし、内製と比較をすると、機動力が遅くアジリティーに欠ける部分もあるため、スピーディにAIを活用したビジネスや業務改善を実現するには絶対に内製化が必要になってくると思います。

新規で人材採用をするには時間もお金もかかってしまうので、まずは社内にプロジェクトを主導するスキルフルな適任者がいるかどうかを見極める、いわゆるタレントファインディングすることが重要だと考えています。もし適任者がいない場合は、外部パートナーと連携をしながら並行して採用を強化していくしかないでしょう。

いずれの場合においても、適任者の発掘や採用には、まずは社内に必要なAI人材の明確化や定義・スキルの可視化をすることが最重要であると思います。

ーーありがとうございました。

AI・機械学習の基礎力が測定できる「Ai人材検定 for Business / Engineer」について

この度アイデミーは株式会社ギブリーと共同で、AI・機械学習の実務力が測定できる「Ai人材検定 for Business / Engineer」をリリースしました。

<リリース詳細はこちら>

この度作成したスキルアセスメントでは、AIの初学者・ビジネスパーソンでもAIや機械学習の教養・リテラシーを測ることができる for Business と、より応用的なディープラーニング領域や、Pythonを利用した実務的なデータ操作能力を扱うエンジニア向けの for Engineer の2つのテストによって、スキルを可視化することが可能になっています。

また、それぞれのアセスメントは、アイデミーが提供しているeラーニングプラットフォーム「Aidemy Business Cloud」の学習教材内容に対応しており、スキルチェックと学習を組み合わせることでより効果的なAI人材の育成につなげることが可能です。

【検定内容詳細】

Ai人材検定 for Business

概要 AIの初学者・ビジネスパーソン向けに、主にAIや機械学習の教養・リテラシーに関するスキルを測ります
問題数 60問
制限時間 40分
出題範囲 ・AI入門・ビジネス活用

・DX入門

・ビジネス数学

・統計学基礎

・データサイエンス入門

・機械学習概論

 

Ai人材検定 for Engineer

概要 エンジニア向けに、AIの入門から、応用的なディープラーニング領域や、Pythonを利用した実務的なデータ操作能力を測ります
問題数 110問
制限時間 180分
出題範囲 ・AI入門・ビジネス活用

・AIマーケター/リテラシー

・DX入門

・ディープラーニング基礎

・データクレンジング 

・機械学習概論

・Python入門

・Python ライブラリ NumPy / Pandas / Matplotlib

 

【提供開始時期】

2021年4月より、Aidemy Business Cloudご契約の企業様に提供を開始しております。

 

【お問い合わせについて】

Ai人材検定 for Business / Engineer の詳細をご希望される方は、お問い合わせまたは下記へご連絡ください。

株式会社アイデミー 事業本部 (担当者:金沢)

電話:03-6868-0998(平日10:00-17:00) email: support@aidemy.co.jp

 

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